F1シーズンを転戦していると普段見かけない人との出会いがある。そんな人に、「あなたは何しに、レースに来たのか?」を尋ねてみる特別企画。今回はルノーでニコ・ヒュルケンベルグのレースエンジニアを務めるマーク・スレードだ。
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F1の公式セッションが行われないモナコGPの金曜日に、ルノーがF1参戦40周年を祝って往年の名車を走らせるというイベントを行なった。
準備されたマシンは、記念すべきルノーF1のデビュー作であるRS01(1977年)とルノーにとって初のフルカーボンマシンとなったRE40(83年)だ。
しかも、その2台のステアリングを握ったのは、現役時代にそのマシンに乗っていたジャン=ピエール・ジャブイーユとアラン・プロストという粋な演出を行なったものだから、走行前に2台が停車していたピットレーン出口にはメディアだけでなく、ピットレーンで仕事をしていた多くのF1関係者も訪れた。
訪れたF1関係者は、手にしたカメラやスマホで写真を撮りまくるなど、まるで一般のファンのように目を輝かせていた。その中で、ひとりプロストが乗るRE40に近づく者がいた。
それは現在、ルノーでヒュルケンベルグの担当レースエンジニアを務めているマーク・スレードだ。しかも、スレードは近づいただけでなく、ヘルメット越しにプロストと会話を始めた。
スレードがマクラーレンに入ってF1の仕事を始めたのは91年だから、まだプロストは現役だったわけだが、そのときにはプロストはすでにマクラーレンを出てフェラーリに移籍していた時期だ。なぜ、スレードはプロストの元を訪れたのだろうか。
「じつは96年に私がまだマクラーレンでテストチームのエンジニアを務めていたとき、アランがマクラーレンのテストをしたことがあってね。私はシルバーストンとポール・リカールで2度アランと仕事をした経験があるんだ」
スレードはその後、マクラーレンでレースチームのレースエンジニアとなり、キミ・ライコネンやフェルナンド・アロンソと仕事を行い、2011年にはメルセデスで復帰したミハエル・シューマッハの担当も務めるなど、輝かしい経歴を歩んだ。
「私にとってアランは、レースエンジニアを目指す上で基本を教えてくれた大切な師匠。いまでも彼との仕事は私にとって宝となっている」
そういって、スレードはヘルメット越しに久しぶりにプロストと会話した余韻に浸っていた。