2017年05月26日 17:33 弁護士ドットコム
会社の役員付きハイヤー運転手として働いていた男性(当時63)が死亡したのは「過労が原因だ」として、遺族が労働災害保険を請求していた事件で、東京労働局が、新宿労働基準監督署の下した労災不支給処分を取り消す決定をしていたことがわかった。決定は3月28日付。
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遺族の代理人をつとめたNPO法人神奈川労災職業病センターの川本浩之氏が5月26日、東京・霞が関で記者会見を開いて明らかにした。川本氏は「労基署が時間外労働を短く認定して、不支給処分を下すという信じがたいことが起きていた。本来ならば、労基署で(労災が)認められるはずだった」と述べた。
川本氏によると、男性は、大手タクシー会社のハイヤー運転手として定年を迎えたあと、2013年、役員車の運行管理請負をおこなうS社(東京・新宿)に採用された。S社が請負契約を結んでいるF社(神奈川)の役員付き運転手として働いていたところ、2015年10月に勤務中に倒れて亡くなった。死因は心筋梗塞だったという。
男性は、F社役員の会食の移動などのため、平日深夜まで働くことが多く、休日も役員をゴルフ場へ送迎するなどしていた。結婚記念日に妻と食事に行けなかったり、遠方から遊びに来た孫と会えないこともあったという。亡くなる直前6カ月の時間外労働は、月平均約147時間(最大183時間)に及んだ。
遺族は2015年12月、労災申請したが、新宿労基署は2016年6月、労災不支給処分を下した。厚生労働省の基準によると、タクシーなどの運転手の場合、作業時間(運転・整備など)だけでなく、手待ち時間(客待ち時間)も労働時間に含まれる。しかし、新宿労基署は、手待ち時間を休憩時間とみなして、男性の時間外労働を月約40~50時間程度だったと判断した。
遺族は2016年7月、この処分を不服として、東京労働局に労災審査請求をおこなった。東京労働局の労災保険審査官は、男性の長時間の時間外労働を認定したうえで「男性の死亡と業務の間に因果関係がある」として、元の処分を取り消した。遺族側は今後、S社に対して賠償を求めて交渉する予定という。
(弁護士ドットコムニュース)