「あの人は仕事ができる」とよく言ったり聞いたりするが、何を指して言うのだろう。人材育成支援を手がける産業能率大学は5月25日、仕事センスに関する意識調査の結果を発表した。
調査は4月14日~18日、社会人2年目150人(若手社員)、6~12年目150人(先輩社員)を対象にネット上で実施した。
若手と先輩社員で「仕事スキル」の認識にギャップ
職場に「知識やスキルが高いにも関わらず、仕事を上手く進めるセンスがない人」がいるかという質問に、「いる」と回答した人は全体で60.0%にのぼった。
どのような人を「センスがない」と思うかについて、若手社員は「仕事の効率が非常に悪いから」「仕事の効率が非常に遅いから」等とざっくりとしている一方で、先輩社員は「状況把握が出来ていない」「一人で全部やろうとして要領が悪い」と具体的に回答が目立った。
また「自分は仕事センスがあると思うか」という質問には、「ある」「少しある」が計45.3%、「ない」「あまりない」が計54.7%という結果になった。
若手社員で「自信がある」と答えた人は、その要因について
「営業成績もいいから」(22歳男性)
「売上を上げた」(23歳男性)
と回答。また、「自信がない」という若手社員はその理由を「実績を上げられていないから」(24歳女性)、「仕事をうまく回せないから」(25歳男性)と回答している。営業成績や売上などの実績が上がれば「仕事センスがある」と捉えているようだ。
一方、先輩社員で「自信がある」人は
「調整しなければならない事を段取り良く進められる」(26歳女性)
「言われたこと以外にも自分なりに考えて提案するから」(29歳男性)
と回答。「自信がない」先輩社員も「判断するのに時間がかかり、優柔不断なところがあるため」(30歳女性)、「相手のことを考えて行動ができていないように感じる」(32歳女性)と答えている。現場での判断や調整力、察知力を「仕事センス」と捉えているようだ。
実際の仕事現場でどんな力が役立つかは、社会人経験を重ねなければわからない。先輩社員の「仕事センス」がより具体的なのもそのためだろう。
就活時に「自分をアピールできる人がいい人材」と言われてきたのも影響か
「仕事センスがある人」に見られる特徴をたずねたところ、全体では「自分で判断して行動する力がある」(69.3%)が最も多い回答となった。しかしここでも若手社員と先輩社員間で大きなギャップが見られた。
特に男性では、先輩社員が「関係者を調整することが得意」(46.7%)、「相手の言動から状況を察知できる」(37.3%)を重視している一方、若手社員で同じ回答をした人はともに28%、24%という結果に。
女性では、先輩社員が「自分で判断して行動する力がある」(73.3%)を重視しているが、若手社員では54.7%と18.6ポイントも差が出た。また「人柄のよさ」について若手社員の54.7%が重視しているのに対し、先輩社員は36.7%と16ポイント減少している。
この世代ギャップについて産業能率大学経営学部・齊藤弘通准教授は「新卒2年目社員は、就活時代に『自分をアピールできる人がいい人材』と言われてきた記憶が強く残っているためではないか」とコメントしている。
また6年目以降になるとさまざまな部署との調整や失敗も含めた経験が積み重なってくる。そこから「関係者との調整をうまくできる」「相手の言動から状況を察知できる」人が、仕事センスが高いと答えていると考えられるようだ。