マレーシア国籍のマニュファクチャラーとして、2000年代からWRC世界ラリー選手権やAPRCアジア・パシフィック・ラリー選手権などで活躍してきたプロトンが、英国のマニュファクチャリング企業MEM社と共同で、新型ハッチバック『アイリス』のR5マシンを製作。2018年のWRC2参戦を目指していることが明らかになった。
この新型『アイリス』は、グローバル展開を行うBセグメントのハッチバック・モデルで、現在R5マシンはイギリス・ダービシャー州にあるMEMのファクトリーで製作作業が行なわれている。
プロトンとMEMは、この新型R5規定モデルを来月開催のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードの会場でラウンチすることを計画しており、R&Dの作業が急ピッチで進められているという。
クリス・メラーが代表を務めるMEM社は、かつてプロトンとともにサトゥリア・ネオS2000を製作。WRCでもクラス優勝を記録し、ERCヨーロピアン・ラリー選手権合流前のIRCインターコンチネンタル・ラリー・チャレンジでも表彰台を獲得。さらにお膝元のAPRCではタイトルを手にするなど、輝かしい戦績を残している。
また、プロトン自身も古くから積極的なラリー活動を展開してきており、ライセンスを結んでいたミツビシとの関係から、ランサー・エボリューションのバッジエンジニアリング・モデルで戦うなど、ファンにはおなじみのメーカーでもある。
その経緯もあり、この新型『アイリス』に積まれる1.6リッター・エンジンは、ランサー・エボリューションXが搭載する4B11を排気量ダウンしたユニットとなっている。
■アイリスは「サイズと形状がラリーカーとして理想的」
「昨年、プロトンのファクトリーでこのモデルを見たとき非常に興奮したのを覚えている。まさにベースとして最適なロードカーがようやく現れたと思ったんだ」と、MEMのクリス・メラー。
「アイリスのサイズと形状はラリーカーとして理想で、すべてが正しい位置に配置されている。全長はかつてのサトゥリアよりも短いが、ホイールベースは長く、ストラット・トップの位置は正しいポジションに来ている」
「冷却に必要な開口面も確保できそうだし、素晴らしいベースカーを手に入れたと言える。あとはすべての要素を搭載すればいいだけだ」
「エンジンも本当に強力でパワフルだ。実績のあるエボXのものをスケールダウンしているので、これを強化する際には有利に働く要素となる」
「そのエンジンに、Xトラック製のミッション、レイガー製のダンパー、ブレンボのブレーキシステム、コスワースの電装系など、すでに定評あるパーツで構成し、R5カーを仕立てていく」
MEM社はこのマシンをWRC2クラスと、APRCの双方へ送り込みたい考えを持っており、それが実現すれば、4年前にサトゥリア・ネオの生産終了とともに途絶えていたプロトンのラリー・プログラムが復活することとなる。
「プロトンはその間も、ラリーへの興味と情熱を失ってはいなかったし、この競技で戦いたいという意向をもっていたんだ」と、メラー。
「ただ、最適なベースモデルが存在していないだけだった。プロトンは我々とともに再びこの場所に戻ってくることに興奮している」
「まだ多くの仕事が残されていることは確かだが、この後は多くのR&D作業とテストをこなしていくことになるだろう。グッドウッドでのデビューは野心的目標かもしれないが、仕事は順調に進んでいるよ」
この『プロトン・アイリスR5』は左右ハンドルが設定され、2018年シーズンのWRC参戦を果たすには、同年の1月1日までにFIAによるホモロゲーションを経る必要がある。