2017年05月24日 14:34 弁護士ドットコム
アリさんマークで知られる引越社のグループ会社「引越社関東」で営業職だった男性社員(35)が、シュレッダー係に配置転換させられたのは不当だとして、地位確認などを求めていた訴訟は5月24日、東京地裁で和解が成立した。
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主な和解内容は、会社は(1)6月1日付で、男性を営業職として復職させる、(2)営業車両の使用を認める、(3)配転前の労働条件に戻す、(4)解決金を支払う、(5)シュレッダー係に配置転換したこと・罪状ペーパーを貼り出したことについて謝罪する――など。なお、解決金の額は明らかにされていない。
この日の和解成立の知らせを受けて、男性は「実感はまだないが、一区切りつけた」「営業職に戻れるのはうれしい」とコメントした。男性が加入する労働組合プレカリアートユニオンの清水直子・執行委員長は「大勝利的な和解だ」と話している。
男性は2011年1月、引越社関東に入社。ドライバーを経て、営業職として勤務していた。残業代が支払われなかったうえ、営業車運転中の事故で弁償代を請求されたことから、2015年3月に労働組合に加入。ところが同年4月、営業職から「アポイント部」に配置転換された。さらに同年6月、一日中、立ちっぱなしの「シュレッダー係」に配転させられた。
男性が同年7月、配転命令を無効を求める訴訟を起こすと、会社側は同年8月、「会社の名誉を傷つけた」として、男性を懲戒解雇した。その際、男性の氏名と顔写真入りの「罪状」と題した紙(罪状ペーパー)をグループ全店に貼り出した。その後、解雇は撤回されて、男性は復職したがシュレッダー係のまま。一日中紙に触れることから、手はカサカサで荒れているという。
この日の和解成立後、男性の代理人と労働組合が、東京・霞が関の厚生労働省記者クラブで会見をおこなった。男性は勤務日だったことから、その場に姿を見せなかったが、昼休みに電話を通じて報道陣の質問に答えた。
男性は、和解成立について「まだ実感がありません。和解条項がどういうものかしっかり読めておらず、『ああ、そうなのか』という感じです。ただ、これで一区切り付けたのは間違いありません。未払い残業代の問題など、まだまだ課題は山積みです」と感想を述べた。
懲戒解雇されたことが、一番印象に残っているという。「人生で初めて。経験したことがなかったので。頭が真っ白になりました。二度と経験したくありません。あのときは、そういう状況に追い込まれて何もできない自分に情けなくて、涙を流しました」と振り返った。
男性は「会社で働いている人だけでなく、社会全体にこの戦いを知ってもらいたいという思いがありました。同じように困っている人がいたら、アドバイスできることがたくさんあるので、そういう人の役に立ちたいと思っています」と語っていた。
(弁護士ドットコムニュース)