イギリスGPを開催するシルバーストンが、解約条項を使って現在の契約を2019年の開催をもってキャンセルすることを検討していることが昨年明らかになり、同グランプリの将来に懸念が生じている。
シルバーストンは17年間にわたってF1を開催する契約を結んでおり、その期間は2026年シーズンまでということになる。シルバーストンのオーナーであるブリティッシュ・レーシング・ドライバーズ・クラブ(BRDC)は、そのF1開催権を失いたくないと考えている。
しかしBRDCは経済的負担の大きさから、契約の解約条項の発動を検討している。これはグランプリを10回開催した後(2019年シーズンの後)ならペナルティ無しで契約を終了できるというものだ。
現在の契約下での最初のレース開催となった2010年、開催者側の費用負担は1200万ポンド(約17億4000万円)だった。F1の開催契約によく見られるように、この契約にはエスカレーター条項が組み込まれており、最後の開催年には開催者側の費用負担は2600万ポンド(約37億7000万円)に膨れ上がることになる。
この金額は、これまでにサーキット側が支払った最も高い開催料というわけでは決してない。ロシアGPでは初開催料として2500万ポンド(約36億2000万円)が支払われたとみられ、それ以降、毎年金額は上がっているのだ。
しかしF1カレンダーにある多くのレース会場は政府から資金援助を受けている。一方、シルバーストンは政府の援助を受けておらず、昨年は14万人のファンを集めたものの、財政的に開催を継続するのに苦闘している有様だ。
スペインGPでBRDCチェアマンのジョン・グラントと会ったF1会長のチェイス・キャリーは、F1の新オーナーたちは「契約の再交渉を行うつもりはない」と週末に語っていた。
まるでリバティ・メディアはイギリスGPの存続を助けることに関心はなく、GP開催は危機に瀕するしか道はないように聞こえる。
しかし別の見方をすれば、キャリーは言葉を慎重に選んでいるともいえる。
既存の契約を調整するとなると、他の会場も同様の調整を求めてくる可能性があるため、キャリーが避けたがるのは理解できることだ。
しかしそれは、シルバーストン側に関心があるのなら、解約条項を発動しつつ、新しい契約について話し合う意思があるという意味にもとれるだろう。
フォーミュラ・ワン・グループにはイギリスGPをF1カレンダーに残したいという意志があり、存続を実現するための選択肢について話し合う用意があるとみられている。
ロンドンの公道でのレースは理想的だが、少なくとも短期的には実現可能性は小さい。シルバーストンは多くの集客を保証できる最適な選択肢である。
シルバーストンとロンドン、または他のイギリス国内のふたつの場所でレースを開催する選択肢もあるが、そうするにはさらなる議論が必要だろう。
BRDCの優先順位はまずシルバーストンでのレース開催を継続することにある。F1の新経営陣との話し合いや、彼らがすでにもたらしている影響にBRDCは励まされている。
新オーナーたちはスペインGPで新しい一連の取り組みを始めた。会場では内容を一新したファン・ゾーンを標準化し、シミュレーターやピットストップチャレンジコーナーを設け、2シーターのF1マシン体験が当たるコンテストが開催された。
シルバーストンは、7月のイギリスGPでも同じ取り組みが可能かどうか、また、チケットの販売促進のためロンドンでレースウイークの水曜日にレース前のイベントを開催する企画は可能かどうか、回答を待っている。
BRDCはイギリスGPの直前までに、解約条項を発動するか否かを決定しなければならないが、現時点で決定は下されておらず、すべての選択肢の検討を続けているという。
解約条項が発動されたからといって、イギリスGPが即座に終わってしまうわけではない。レースは2017年、18年、19年と続き、シルバーストンとF1には新契約について話し合いができる2年半の年月が残される。