マクラーレン・ホンダの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レースごとに、週末のマクラーレン・ホンダのコース内外の活躍を批評します。今回は第5戦スペインGPを、ふたつの視点でジャッジ。
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ホンダにとって、F1スペインGPはさまざまな収穫を得たグランプリだった。
ひとつはパワーユニットをアップデートしたことだ。ホンダはすでに複数のエンジンを投入しているため、スペインGPでの改良はエンジン本体ではなく、これまで使用してきたエンジンはそのままに、吸気系とイグニッションに改良されたものを採用してきた。
吸気系の改良は昨年のイギリスGPでも行なっており、このときはスペック1からスペック2に呼称を変更するほどの改良だった。今回のアップデートもホンダが「スペック2」と呼んでいることを考えれば、開発スピードは昨年よりも早くなっていることがわかる。
しかも、今回の吸気系とイグニッションの改良は「昨年のスペック2よりも大きなステップアップ」(長谷川ホンダF1総責任者)だという。ただし、長谷川総責任者は「今年のステップ1が想定していたよりも性能が高くなかったことから、まだまだライバルとの差が大きく、胸を張るまでには至っていない」と満足はしていない。
このステップアップによって、ホンダのエンジンは出力が上がったが、特に低回転時のパワーを改善され、スムーズにパワーが出るようになった。「これまではNE(エンジン回転数)が9000回転ぐらいになると急激に出力が落ちていて、出力の谷が大きかったので、そこを持ち上げよう」という期待通りの結果を得られた。
また、これに合わせてエンジンのマッピングを調整した結果、テスト時から悩まされていたオシレーション(共振)も改善された。長谷川総責任者によれば、「オシレーションの問題は、データ上、良くなっていることを確認していますし、少なくともストフェルは『まったく問題なかった』と語っていた」という。
これによって、シフトアップも振動に悩まされることなく、一番良いベストなタイミングでできるようになった。このドライバビリティの向上が、フェルナンド・アロンソの今シーズン初の予選Q3進出に大きく貢献したことは言うまでもない。またレースでも序盤はロマン・グロージャン、中盤はトロロッソよりもペースは速かった。
そのアロンソのエンジンに金曜日のフリー走行でトラブルを出したことは残念だが、それ以降はセッション中にマシンが走行できなくなるというトラブルは起こさなかった。ただし、決してトラブルフリーだったわけではない。予選のQ1の最後にストフェル・バンドーンが車検室に呼ばれた際、電気系に問題があり、予選後にバンドーンのパワーユニットのみ、ESとCEを新品にした。
トラブルが出たことは残念だが、そのトラブルをレース前に事前に察知し、交換することでレース中のトラブルを未然に防いだことは評価される。スペインGPではメルセデスAMGはボッタスのパワーユニットに、フェラーリはベッテルのパワーユニットに問題を起こしていたが、彼らも問題は予選やレースまで引きずることはなかった。
スペインGPは開幕4戦に比べると、とても落ち着いた戦いができていたように思う。ポイントは獲得できなかったが、流れを変えるグランプリになっていたことは確か。モナコGPに期待がかかる。
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マクラーレン・ホンダ辛口コラム スペインGP編:チームとドライバーたちに足を引っ張られたホンダ