F1の予選におけるQ1からQ3までのノックアウトシステムは、ギリギリで通過できるか否かの緊迫感はあるが、Q3に進出するドライバーとチームが常態化しつつあるのは否めない。
しかしインディ500の予選は、一か八かの大勝負。気温や運も左右し、誰もが上位進出の可能性があり、この壮大なレースの見どころのひとつだ。
まず初日はクジを引いたドライバーが順に1台ずつアテンプト(予選アタック)し、4周を走ってその平均時速で順位を決める。その上位9位(ファスト9)とそれ以下のドライバーにわけられ、翌日には10位以下33位のまでドライバーが再度アテンプトし、そのタイム順にグリッドが決まり、ファスト9は別のアテンプトでさらにポールポジションから9位までを決める。
インディ500初挑戦のアロンソにとっては、この予選が最初の難関と言えた。
プラクティスの5日間でマシンを順調に仕上げ、トップ5に入るポテンシャルを見せつけた。だが、この1発の予選で失敗してしまえばグリッドは後方に沈むことになる。
予選アタックに向けてダウンフォースの設定は適切か? 気温や風向きに対して対応できているか? ライバルのマシンのダウンフォースは?など、さまざなの要因を加味してコクピットに座る。
1周わずか40秒弱、合計でも2分30秒で運命が決してしまうのだ。しかも予選初日には途中に豪雨があり大幅に遅れて始まった。当然気温や路面状況も変わってくる……。
アロンソの1回目の予選。アロンソは15番目に登場。アテンプトの列に並ぶと前後のマシンのウイングを観察したり、ジル・ド・フェランのアドバイスを聞いたりして冷静にコクピットに座った。
1周目/39.0731、2周目/39.0862、3周目/39.1569、4周目/39.1823 をマーク。ややダウンフォースを削り、壁スレスレの危ういシーンもあったが、なんとか無事にピットに戻ってきた。平均時速は230.034mphをマーク。
マシンを降りたアロンソは、笑顔をほころばせながら、TVのコメントに応じている。230mphオーバーの世界から戻り、ほっと安堵している様子がありありだ。
待機していたアンドレッティ、マクラーレンのチームスタッフも歓喜を声を上げる。フェランやスタッフと抱き合うと、喜んだ様子でインディ500恒例の集合写真に収まった。
結果7番手でファスト9に進出が確定し、翌日はPPを目指しアテンプトすることになった。
アロンソは「ここは本当にユニークなトラックだね。2度と同じコンディションがないようなトリッキーなコンディションだし、ターン1から4までいつも戦っていないといけない。今日はファスト9に入れてハッピーだし。明日はもっと速く走れるだろう」と、自信をのぞかせていた。
予選2日目は、プラクティスでマシンのチェック。そこで6番手のタイムを出すのだが、そこでエンジンに不具合が見つかりプラクティス終了後にエンジンを交換することになった。
しかし、アンドレッティ・オートスポートはチーム総動員で29号車のエンジン交換にあたり、なんと1時間余りで交換して見せた。まさにチーム力の真骨頂だ。
アロンソは2回目の予選、ファスト9のアテンプトで3番目に登場。4周の平均時速が231.300mphと前日のコメント通りに、初日より速く走って見せた。
コンディションの状況を差し引いても2列目、5番手のグリッド獲得はあっぱれである当のアロンソも若干の悔しさを抱えながらも、喜びを隠そうとしない。
「2周目にターボのオーバーブーストのトラブルがあったので、ストレートで少し伸び悩んでしまった。それがなかったら、ポール争いが出来たと思うよ。でも大急ぎでエンジンを換えてくれたクルーに感謝しているよ」
インディ500最初の難関を突破したアロンソ。しかも2列目のグリッドを確保した。ほぼ完璧な仕事だと言えるだろう。28日の決勝に向けて期待は高まるばかりだ。