職場で何らかの不正が行われていると知ったとき、内部告発者として通報するかどうかは悩ましい問題だ。通報者として報復人事を受けたりもみ消されてしまえば、リスク覚悟で勇気を出した甲斐が無い。
5月中旬、「内部告発をするかしないか」で悩む女性が、ガールズちゃんねるに相談を寄せた。トピ主は新卒で働きだして2カ月の職場(保育園で事務職)に不信感を抱いているという。「職場の内部告発をしたい方・した方、した方はその後どうなったのか」教えて頂きたいですと呼びかけている。(文:okei)
園長が常にいない保育園、保護者にウソも
トピ主が不信を感じるのは、園長がほとんど園にいないことだ。園では、子どもに何かあれば園長に電話して許可を得てから家庭に連絡することになっているが、園長と2・3時間連絡がつかないこともザラにある。
その間は保護者に連絡出来ず、保育士は発熱があった時刻を保護者に「嘘をつくことが多々見受けられます」という。これは保護者に虚偽の連絡をしている時点でアウトだろう。緊急を要する事態に対応できず、子どもを守り切れない恐れもある。
穿った見方をすれば、大阪市淀川区の森友学園問題のひとつも思い出す。保育所の所長が常駐していないのに、常駐が前提の補助金を不正に受け取っていたとされる疑惑だ。いずれにしろ、よほどのことがない限り外部からは見えにくい問題で、内部告発は貴重な情報源になる。
「上司に相談したら私が遠くに飛ばされた」
では、「通報した人」はどうなるのか。スレッド内では、会社の不正というより同僚の横領や上司の勤務中の飲酒など、社員の罪を会社に報告した人が目立った。
比較的悪くない結果としては、不正をした社員が行方をくらましたりクビになったりで、通報者には特に何もなく、むしろ「蚊帳の外に置かれた」という証言もある。
一方で、痛恨の結果も書き込まれている。臨時で公務員をしていたときに、職場の内部告発をしたいと弁護士に相談した人は、「守秘義務違反にあたってあなたが不利な立場になる」と言われたという。
「とりあえず、上司やらに相談したら私が遠くに飛ばされた。アホくさくなって辞めたわ」
他にも、左遷や解雇などえげつない報復人事が挙がっている。
「売上のためになんでもする同僚に多少のことは目をつぶっていましたが、さすがに(個人情報保護法に抵触)ヤバイと思い上司に報告。後日、同僚は厳重注意、私、解雇通告。会社は売上を選びました」
「某大手量販店に勤務していた時に、同僚が上司をパワハラで告発しました。上司はイエローカード(厳重注意)、告発した同僚は通常ではありえないほど遠距離の他店へ移動になりました」
こうした内部告発は、本来、企業にとって不正を正すチャンスと捉えるべきだが、長年不正を繰り返していると、そうしたことにも気づかない(ふりをする)のかもしれない。
内部告発増加の背景には「非正規雇用の増加」がある?
しかし、誰かの生命に関わるなど見過ごせない不正を告発した人は、不利益にならないよう守られるべきだ。そのために2006年に施行された「公益通報者保護法」だが、対象範囲が狭く通報者に不利益な処遇をしても罰則がないなど不備が指摘されていた。
一方で、内部告発をした人・された組織の行方を綿密に追う「ルポ 内部告発-なぜ組織は間違うのか」(村山治、奥山俊宏、横山蔵利 朝日新聞出版)には、内部告発が増えた原因は、一つはこの法律が施行されたことと、最大の原因は「非正規雇用の増大」だという見方があった。
「従業員が会社に帰属するという意識=会社と従業員が一体だという意識が雇用形態の変化により喪失したことが一番。終身雇用制の崩壊と連動している」
正社員であろうと会社への帰属意識は薄らいでいる昨今、今後ますます内部告発は増えるだろう。正しい行いをした人が守られるよう、法整備が待たれるところだ。