2017年05月22日 09:53 弁護士ドットコム
日本人ネイリストの技術力の高さには定評があり、最近では、日本旅行の目的としてネイルサロン訪問をあげる外国人旅行客もいるそうだ。しかし、そのデザインをめぐって、あるネイリストから、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに悩みが寄せられた。
【関連記事:子連れ夫婦、2人分の料理を注文して「小学生の子ども」とシェア…そんなのアリ?】
投稿者は、他のネイルサロンのHPや、パンフレットに掲載されたネイルデザインを使って、客に施術したいと考えている。しかし、「著作権侵害になってしまうのでしょうか」と、心配しているようだ。
ネイルデザインも、著作権保護の対象となる「著作物」なのだろうか。知的財産権法に詳しい河西邦剛弁護士に聞いた。
「ネイルデザインが著作権法上の『著作物』といえるかどうか。これを検討する上では、そのネイルデザインに『創作性があるか否か』が重要なポイントになってきます。
著作物とは、『思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの』(著作権法2条1項1号)です。なお、著作物であるとされるためには、実際に表現されていることが必要であり、頭の中でイメージしただけでは著作物にはなりません」
では、ネイルデザインはどのように判断されるのだろうか。
「著作権法第10条には、著作物に該当するものが例示列挙されているのですが、ネイルデザインは『美術の著作物』に該当すると考えられます。しかし、全てが該当するわけではありません。著作物として認めることは、そのデザインを独占できる非常に強い権利を与えることになるからです。
ネイルデザインは人間の爪に施すものですから、表現するスペースにも限界があり、デザインは自然と似てしまうことにならざるをえないでしょう。実際、簡単なネイルアートにまで著作権を認めてしまうと、現実社会で弊害が生じかねないので、かなり創作性の高いネイルアートでないと著作物と認められない可能性があります。
しかし、過去の裁判例を見てみると、独自のヘアスタイルや化粧等を施されたモデルが著作物として成立する余地があるとした裁判例もありますので、ネイルアートだから著作物に一切該当しないということにはならないでしょう」
今回のケースでは、真似したいデザインが著作物に該当するものかどうかは不明だが、相談者に対して、河西弁護士は次のように助言する。
「最後に、ご質問に対する返答になりますが、ネイルサロンのHPやパンフレットに掲載されていたデザインの創作性が高く著作物に該当するとなれば、同じデザインをお客さんに施すことは著作権侵害ということになります。
もっとも、理論的にはこのようになりますが、実際の裁判例で著作物と認定されるネイルアートはかなり少ないとは思われます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
河西 邦剛(かさい・くにたか)弁護士
主な取扱い案件は、芸能トラブル、エンターテインメント分野、ライブイベントに関する法律分野、知的財産分野(意匠、商標、特許)等。芸能・エンターテインメント分野の統括責任者。多種多様な芸能案件に携わる。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/