トップへ

GT300予選《あと読み》:総合力求められるオートポリス。決勝の展開はまだまだ見えない?

2017年05月21日 09:52  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

VivaC team TSUCHIYAの土屋武士監督と松井孝允
■ドライバーとクルマと、タイヤが揃ったポールポジション
「ここは(優勝)獲らないと。できれば(マッハ車検 MC86 GTNETと)ワン・ツーだね」

 2年ぶりの開催となるスーパーGT第3戦オートポリスの搬入日。VivaC 86 MCの土屋武士監督はそう語った。ここオートポリスはアップダウンに飛んだテクニカルコース。まさにコーナリングに秀でたGT300マザーシャシーを含むJAF-GT向けのコースと言えるだろう。

 特にそれを印象づけたのは、午前の公式練習のリザルトだ。UPGARAGE BANDOH 86が1分44秒881でトップタイムをマークし、JAF-GT勢は軒並み上位へ。また、予選Q1でもコースアウトを喫した埼玉トヨペットGreenBraveマークX MCとARTO 86 MC 101以外がすべてQ2に進出している。

 ただ、Q2では明暗が分かれている。上位を占めたVivaC 86 MC、SUBARU BRZ R&D SPORT、マッハ車検 MC86 GTNETとも、2名のドライバーが好タイムを並べられたからこそ上位につけることができているのだ。土屋監督は「このコースは、クルマとドライバーとタイヤのすべてが高いポテンシャルを出さないと速く走れないコース」だという。

 今回ポールポジションを獲得したVivaC 86 MCは、記者会見で松井孝允と山下健太が口を揃えたとおり、「クルマは持ち込んでほとんどいじっていないくらい決まっている状態」だ。これは昨年の第7戦タイでも松井の口から語られた状態で、こうなったときのVivaC 86 MCは手がつけられない。まさに土屋監督が狙ったとおりの状態だ。

 そして、興味深いのは3番手のマッハ車検 MC86 GTNETだ。特にマッハ車検 MC86 GTNETは、2017年からつちやエンジニアリングが技術協力をして、藤波清人と坂口夏月というフォーミュラ出身のふたりが駆るようになってから、その速さは顕著だ。特にチームにとってはこの九州が地元。2番手となったSUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人とともに、九州勢の活躍は2年ぶりのオートポリス開催に力を与えるものだろう。

 ちなみに、マッハ車検 MC86 GTNETはエアロ等、まだVivaC 86 MCほど大きな改造がまだ加えられていない。土屋監督に「今後マッハ車検 MC86 GTNETも力を入れていくのか?」と聞くと「もちろん。25号車がウエイトを積んできたら、5号車にタマを入れてどんどん速くしていく。(周囲から)『つちやエンジニアリングめんどくせえ!』と言われるようにならないと。それがレース屋でしょ」というから恐ろしい。決勝でもJAF-GT勢が逃げる展開になるかもしれない。


■GT3勢ではメルセデス、BMW勢に期待

 では、GT3勢はここオートポリスでJAF-GT勢に太刀打ちできないのか。それはレースは始まってみないと分からない。特に今回は路面温度が想像以上に高く、前週に行われたGAZOO Racing 86/BRZ Raceはかなり冷え込んだため、「来てみたら暑くて驚いた」という関係者が多かったほど。夕刻が近づくと急速に冷え込むこともあり、「レース後半になって元気になるクルマもいるだろうね」という証言もあった。

 GT3勢のなかで、マザーシャシー勢の牙城を崩しそうなのは、今季速さを発揮するメルセデスベンツAMG GT3勢、そしてBMW M6 GT3勢、復活した50号車フェラーリ488 GT3を推したい。メルセデスはGAINER TANAX AMG GT3が5番手、「チームもドライバーもちょっとずつミスがあった」という開幕ウイナーのグッドスマイル 初音ミク AMGが6番手。BMW勢はARTA BMW M6 GT3が4番手、Studie BMW M6が9番手につけている。

 BMW M6 GT3はその巨躯だけにコーナリングが得意そうではないが、カウルの中を見ると“コーナリングマシン”ぶりが良く分かる。実際にQ1で3番手をマークしたStudie BMW M6の荒聖治は「BMW Z4 GT3で走ったここのフィーリングも良かったんですが、それよりも気持ちいいんですよ」という。

「見た目からは想像できないかもしれないですけど、ブレーキングしてターンして、コーナーを連続していく区間の走っている感じがすごくいい。“楽しい!”って感じるくらいです。ここはM6に乗って以来、予選でいちばん気持ちよかったです。僕もビックリしましたけどね(笑)」

 いずれにしても、決勝は軽さとコーナリングに秀でるJAF-GT/マザーシャシー勢と、メルセデス勢やBMW勢と言った、クイックなGT3勢のペースの勝負になりそうだが、まだまだ展開は読めない。ちなみに、第1戦、第2戦ともロングランで驚異的に速いポルシェ911 GT3 R勢も虎視眈々であると付け加えておこう。

 2年ぶりの開催で読めない部分も大きい第3戦オートポリス。未知なところが大きなレースにはなるが、そういうなかでの戦いで取りこぼしがあると、後々シーズンを通して効いてくるのかもしれない。