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吉澤嘉代子、初のドラマ主題歌で挑んだ妄想全開の表現 『架空OL日記』と楽曲の共通点を探る

2017年05月20日 17:03  リアルサウンド

リアルサウンド

吉澤嘉代子

 吉澤嘉代子が初のシングル『月曜日戦争』を5月24日に発表する。表題曲はバカリズムの原作・脚本・主演で話題を呼んでいるドラマ『架空OL日記』(日本テレビ系)の主題歌として書き下ろされたもので、吉澤にとっては初のドラマ主題歌。作品との相性の良さもあって、彼女の知名度をさらに広げる一曲になることは間違いない。


 『架空OL日記』とは、バカリズムが銀行勤めのOLのフリをして綴ったブログの書籍化が原作で、ドラマではバカリズムがそのままOLを演じ、夏帆や臼田あさ美らの演じる同僚と軽妙な会話劇を繰り広げるという、シュールかつコミカルな空気感が魅力の作品。


 一方の吉澤も、「妄想系個性派シンガーソングライター」と呼ばれ、曲ごとに妄想でキャラクターやシチュエーションを作り上げる作風が持ち味。3月にリリースされたアルバム『屋根裏獣』では、愛するあまりいつでもそばにいたいと亭主の首を狩り、遠い土地へ逃げようと乗り込んだのが、地獄行きのタクシーだったという「地獄タクシー」など、やはりどこかシュールで、でもクスッと笑ってしまう物語を展開している。


 「言葉」を操り、妄想と現実の絶妙なバランスを生むことによって、視聴者を楽しませるという点は、まさに『架空OL日記』と吉澤の共通点。ドラマの監督を務める住田崇も、吉澤に対し「独創的な世界観があり、ドラマを観た人になんとも言えない不思議な余韻を残してくれるのではと感じた」とコメントを寄せている。


 そして、吉澤が『架空OL日記』の脚本を読んで書き下ろしたのが、タイトルからしてインパクト十分の「月曜日戦争」。「世の中に出るということは、傷つくことでもあります。日々血を流さない戦いをくりひろげる社会人の心象風景として、OLが宇宙戦士となる物語を書きました」との本人コメント通り、憂鬱な月曜日と戦うOLの姿を、妄想全開で楽曲に落とし込んでいる。


 また、2番のAメロでは〈この星を守ってきたのは いつだってそう ヒーローではなくて ヒーターだったの〉という歌詞が出てきて、これはヒーターの故障が題材となったドラマの第一話のストーリーとリンクするもの。ドラマのファンは思わずにやりとすることだろう。


 「月曜日戦争」のもうひとつの大きなポイントは、サウンドプロデュース&アレンジを、音楽プロデューサーのカンケが担当しているということ。バナナマン、おぎやはぎ、東京03といったお笑い芸人との関係が深く、彼らの舞台や番組関連の音楽を多数手がけ、近年ではバラエティ番組『ゴッドタン』(テレビ東京系)の名物企画「マジ歌選手権」の楽曲も多数手がけているカンケは、もちろんバカリズムとの関係も深く、『ウレロ☆未確認少女』(テレビ東京系)や『バカリズム THE MOVIE』にも関わっている。


 「月曜日戦争」では、ギターにCafelonの石崎光、ベースに伊賀航といった、吉澤作品ではお馴染みの面々を迎えつつ、カンケがストリングスとシンセを交えたファンタジックなアレンジを施すことによって、吉澤のこれまでの作風を踏襲しつつも、テレビで流れたときに耳に残る、キャッチーさも加わった楽曲に仕上がっているのだ。


 ちなみに、吉澤は「月曜日戦争」も初披露した『屋根裏獣』のリリースツアーを5月19日に終えたばかり。『屋根裏獣』は「初期三部作の集大成的作品」と位置付けられていただけに、ここから先は新たなモードへと突入していくはず。「月曜日戦争」に関しては、ドラマ用に書き下ろされた楽曲なので、直接的に新しいモードを反映しているとは考えにくいが、「少女の妄想」を背景としたここまでの三部作から、より自分の年齢に近い表現に近づくことは自然な流れだと言っていいだろう。


 シングルの2曲目に収録されている「フレフレフラレ」は「吉澤嘉代子としては初めての?堂々とした応援歌かもしれません」との本人コメント通り、やはり少女というよりは、同年代に向けられている印象だ。毎週憂鬱な月曜日と戦って、ときには振られることもあるけれど、それでも日々を楽しみ、強くたくましく生きる女性たち。まさに『架空OL日記』の中のOLたちにも、そしてその視聴者層にもよりリンクするような、「大人の女性の妄想譚」がこれからは展開されるのかもしれない。(金子厚武)