2017年05月19日 20:53 弁護士ドットコム
いわゆるアダルトビデオ(AV)出演強要問題をめぐり、政府が取り締まり強化などを盛り込んだ対策をまとめたことを受けて、NPO法人ヒューマンライツ・ナウ(HRN)の事務局長をつとめる伊藤和子弁護士は5月19日、弁護士ドットコムニュースの取材に「ようやくここまできた。絵に描いた餅にならないように、しっかりとした対策を期待したい」とコメントした。
【関連記事:AVに映像を使われた松本圭世アナ「だまされる女性が悪いという風潮がある」】
政府は同日、AV出演強要問題への対策を検討する関係省庁会議を官邸で開いた。全国の都道府県警に「AV出演強要問題専門官」を新たに設けるなど、取り締まりを強化することや、被害の相談・支援を充実させることなどを盛り込んだ対策を決めた。
この専門官はAV出演強要について、各種法令を適用した取り締まりのほか、繁華街などで女性を勧誘する「スカウト」に対する検挙や指導、警告活動を推進する役割を果たす。また、被害防止教育や広報啓発活動、相談窓口の周知活動とその窓口担当者に対する啓発などを統括する。
AV出演強要問題をめぐっては、HRNが昨年3月に被害実態をまとめた報告書を発表したことがきっかけで、大きく注目されるようになった。
伊藤弁護士はこれまで、被害相談を受ける中で、警察内でこの問題に関する認識が十分にされておらず、体制も整っていないと感じていたそうだ。取り締まりだけでなく、警察内の啓発などで取りうることも大きいため、今回の目玉の一つ「AV出演強要問題専門官」に期待を寄せている。
一方で、伊藤弁護士は、被害の相談窓口が一本化されていないことに注文をつけた。「相談窓口が多すぎて、どこに行ったらわからない。また、窓口がたくさんあっても、どこもきちんとした研修を受けておらず、たらい回しにされるのであれば、被害者にとって一番良くない」(伊藤弁護士)。
また、出演強要をされた人からの相談の中には「インターネット上に投稿された動画を削除してもらわないと社会生活が立ちゆかない」といったものもあるという。伊藤弁護士は「この点についての被害救済が抜けて落ちている」と指摘。支援団体との連絡協議会を開くなどして、「被害の実態と政府の対策に齟齬がないようにしてほしい」と訴えていた。
(弁護士ドットコムニュース)