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スーパーGT第3戦プレビュー:”レクサスの壁”に挑むホンダ陣営と段階制WHの効力

2017年05月19日 18:52  AUTOSPORT web

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テストでトップタイムのRAYBRIGを軸に表彰台の一角を奪えるか。
レクサスLC500が2戦連続で表彰台を独占するという、一極状態になりつつある2017年のスーパーGT500クラス。今週末に第3戦オートポリス戦を迎えることになるが、ライバル陣営にとっては、このオートポリス戦は今年のレクサスの一極状態を崩す数少ないチャンスになりそうだ。

 このオートポリス戦のGT500クラス最大の注目ポイントは、ホンダNSX-GTの最低重量が第2戦までの1049kgから1034kg(LC500、GT-Rは1020kg)に変更されたことで、15kg軽くなったことだ。これまでの2戦の内容を鑑みて、NSXはミッドシップハンデと言われる性能調整重量が軽減されることになり、この第3戦からパフォーマンスが有利になるのだ。

「重量は下げてもらった方が当然、うれしいですけど、我々エンジニアとしてはちょっと悔しい部分もあります。過去3年、性能調整重量を積んで、今年も重量を積んでも速いクルマを作ろうと開発してきましたが、やはり第1戦、第2戦の結果を見るとそういう結果になるのかなと。今後に関しては我々には追い風にはなりますけど、技術者としてはこれまでの2戦でもうひとふんばり、力が足りなかったと認識しています」と話すのは、ホンダのGTプロジェクトリーダー佐伯昌浩氏。

 15kgの重量はこのオートポリスのサーキットで換算すると1周あたり0.15秒程度のゲインになる見込みで、ホンダ陣営にとっては大きなチャンスとなる。

 また、オートポリス戦に向けた事前のタイヤテストでは、RAYBRIG NSX-GTが総合トップタイムをマークしており、いい流れで本番を迎えることになる。オートポリスの搬入日、RAYBRIGの伊沢拓也も翌日からの本番に向けて抱負を語る。

「テストでは午前の走行はあまり良くなかったのですが、午後にセットを変えて良くなりました。タイムはトップですが、ただ、他の陣営がどんな状態(ウエイトハンデ、燃料流量リストリクター径)で走っていたのかはわかりませんので。それでも(性能調整重量が)15kg軽くなったことで重量の面では前回の富士より戦えるとは思います」と伊沢。

 今回の目標についても「表彰台に行きたいなと思っています」と、期待を語る伊沢。ホンダ陣営のブリヂストンユーザーは決勝でのタイヤのピックアップ(タイヤかすが飛んでいかずにタイヤについたままになってしまい、振動などのグリップ低下を招く)の不安が若干残るものの、まずはレクサス陣営の表彰台独占一角を崩すことが、ホンダ陣営としての最初の目標になりそうだ。

 GT500クラスの優勝争いは、現実的にはウエイトハンデ(WH)の軽めなレクサス陣営になる。前回の富士のレースで接触してしまったDENSO KOBELCO SARD LC500とau TOM'S LC500、そしてレクサス陣営の中で最軽量のWedsSport ADVAN LC500が有力候補。

 特にWedsSportはヨコハマタイヤがオートポリスと相性が良いこともあり、この第3戦はチャンスになる。

「チャンスですね。事前のタイヤテストで走っていないので、2年前のRC Fのデータしかないですが(苦笑)、2年前も予選6番手で決勝は接触があって9位になりましたが、路面μ(ミュー)とコースレイアウト、Gの掛かる場所がヨコハマタイヤには比較的合っているサーキットなので、チャンスはあると思っています」と話すのはWedsSportの坂東正敬監督。

 WedsSportとランキングトップのKeePer TOM'S LC500とはウエイトハンデ換算で50kgの差がある。実際にはKeePer、そしてWAKO'S 4CR LC500、ZENT CERUMO LC500のランキング上位3台はウエイトハンデが50kgを越えたことで、このオートポリス戦から燃料流量径が95.0kg/hから92.4kg/hに縮小される。

 今シーズンから新たに採用される段階的なウエイトハンデ制がどの程度の効力を発揮するのか、今後のGT500クラスを考える上でもこのオートポリス戦は重要だ。オートポリスでのタイム換算として1周あたり0.3~0.4秒程度のハンデとなる見込みだが、実際のレクサス陣営内でのタイム差は注目どころになる。

 もちろん、前回の第2戦富士でMOTUL AUTECH GT-Rが4位に入ったニッサン陣営にも、このオートポリスは過去の実績が良く、大きなチャンスになる。ホンダ陣営とともにニッサン陣営もウエイトハンデが軽いクルマが多く、NSXが15kg軽くなったことで、GT-Rとのタイム差がどのようになるのかは、このオートポリスでの見どころのひとつでもある。

 熊本地震の影響で昨年の開催が見送れ、2年ぶりの九州開催となる今回の第3戦オートポリス。サーキットにはまだまだ地震の大きさを物語る傷跡が残っているが、週末の天候は晴天が続く見込みで、初夏の九州の気持ちいい気候を満喫することができそうだ。