欧州圏内を中心に30年以上の伝統を誇り、2006年からはFIA管轄のヨーロピアン選手権として開催されているFIA ETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップ。その開幕戦が5月13~14日にオーストリア・レッドブル・リンクを舞台に開催され、昨季王者のヨッヘン・ハーンのイベコが、週末全4レース中でオープニングのレース1を含む2勝を挙げ、幸先の良いシーズンスタートを切った。
昨年まで欧州のトラック・マニュファクチャラーで最大勢力を誇るドイツのMAN(マン)を操り、長年エースとして絶大な人気を誇ってきたハーンだが、今季からマシンを一新。
イタリアのIVECO(イベコ)製のストラリスへとスイッチし、自身5度目となる欧州チャンピオンに向け、フレートライナー(アメリカ)、スカニア(スウェーデン)、メルセデス・トラックス(ドイツ)との勝負に挑むこととなった。
週末の土曜午前に行われたQ1と、トップ10により争われるQ2に相当する“スーパーポール”のセッションでいきなり速さをみせたハーンは、午後に行われるレース1のポールポジションを獲得。
迎えた2017年オープニングレースのスタートも決め、20周のレースを終始リード。中盤には2番手を走る女性ドライバー、シュティフィ・ハルムのマンにギャップを詰められるも、ペースを上げて引き離す余裕で、2.213秒のマージンを持ってチェッカー。マシンスイッチ後最初のレースで、イベコに初勝利をプレゼントする強さを披露した
その後方ではポジション争いが激化するなか、ハルムが後続とのバトルを制して2位表彰台を獲得。
めまぐるしく入れ替わった3番手争いは、サッシャ・レンツ(マン)、アダム・ラッコ(フレートライナー)の2台をかわした、ゲルド・コーバーのイベコが入った。
引き続き土曜に行われたレース2は、フロントロウ2番手からスタートしたポルトガル人ドライバー、ホセ・ロドリゲス(マン)が1コーナーで首位浮上。2番手を走る強豪タンクプール24レーシングのメルセデス・ベンツ、ノルベルト・キスに対し3.87秒の大差をつけ勝利。06年のFIA ETRC創設以来初となる、ポルトガル人ウイナー誕生となった。
続いて日曜は、前日同様のタイムスケジュールで午前に行われた“スーパーポール”セッションで、マンをドライブするハルムがレース3のポールポジションをゲット。
ラインアート・レーシングチームの紅一点として戦うハルムは、2番手の王者ハーンをスタートで抑えきると、中盤の赤旗にも動じずリスタートもこなし、16周に短縮されたレースをコントロール。彼女にとっても初となる、リバースポール以外での勝利を決めた。
そして最終レース4は、3番グリッドからスタートした王者ハーンがスタートでフロントロウの2台、レンツのマンと、ラッコのフレートライナーの隙間をこじ開け、早々に首位に浮上。
さらに2番手のレンツは14周目の1コーナーでラッコのフレートライナーにインを刺され後退。ハーンが週末2勝目を飾り、レンツ、ラッコが表彰台。オープニングラップで一時3番手まで浮上したハルムは、左フロントタイヤにトラブルが発生し、無念のリタイアとなっている。
これで王者ハーンが51ポイントを稼ぎ選手権首位。2位には大健闘を見せた女性ドライバーのハルムが40ポイントでつける結果となった。
FIA ETRCの第2戦は5月最後の週末、27~28日にイタリアのミサノ、ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリを舞台に開催される。