WRCへの登竜門として、若きドライバーたちがステップアップを目指して参戦するERCヨーロッパ・ラリー選手権。その第2戦ラリー・イソラス・カナリアスが5月最初の週末にスペイン領グランカナリア諸島を舞台に開催され、2日間全12ステージ中10SSで最速を記録したアレクセイ・ルキヤナク(フォード・フィエスタR5)が、昨年に続き同イベント2連覇を飾った。
デイ1初日の全6SS中、最初の4SSを終えてミッドデイ・サービスに戻ってきた時点で、“ロシアン・ロケット”とも呼ばれるルキヤナクは全SSトップタイムをマーク。
しかし、ライバルとなる2年連続王者のカエタン・カエタノビッチ(フォード・フィエスタR5)に対しては、2.5秒と僅差のバトルに。
「実はステージ2のスタートでミスがあり、ジャンプスタートの裁定で10秒のペナルティを受けてしまったんだ。少し慎重にいかないとね」とルキヤナク。
その言葉通り、午後の2ステージもトップタイムで上がったルキヤナクは、最終的に25.7秒のリードを築いて初日を終えた。
「いい1日だったね。SS2のミスもあったし、今日は少し賢く責めすぎないことを意識して走った。ブルーノ(・マガラエス)も速いし、明日のデイ2も慎重に行くつもりだ」
ルキヤナクが警戒する前戦開幕戦アゾレス勝者のブルーノ・マガラエス(シュコダ・ファビアR5)は、フルターマックの初日で2番手カエタノビッチに遅れること2.2秒の3番手につけた。
「このマシン(ファビアR5)でターマックを1kmも経験しないで走ったことを考えれば、このデイ1はキャリアでも最高の部類に入る1日になった」と満足げなマガラエス。
一方、カエタノビッチのチームメイト、ポール-トーマス・カスペルチェクのフィエスタが、SS1の右コーナーへの突入スピードを誤り、コースオフ。
大きなアクシデントとなったが、タイガー・エナジードリンク・ラリーチームのフォード・フィエスタR5は、ガードレールに救われる形で谷底への転落を免れ、クルーとも無傷での帰還となった。
また、このイベントからERCの戦線に復帰した有力フランス人ドライバー、ブライアン・ブフィエ(フォード・フィエスタR5)は、ブレーキに問題を抱えながらの走行となり、初日は9番手留まった。
続くデイ2も、オープニングのSS7からルキヤナクがスパート。CVジョイントの破損というマイナートラブルがありつつも、そのスピードは衰えることを知らず、続くSS8とSS11のみカエタノビッチにトップタイムを譲ったものの、それ以外のステージをすべて制覇。
最終的に初日の倍となる57.2秒までリードを拡大し、開幕戦リタイアの“悪夢”を振り払う完全勝利を決めた。
「1年を経て大きく進歩できたと実感できてうれしいよ」とルキヤナク。
「4週間前(の開幕戦)は最悪の気分だったけど、今は天国に来たような感じだ。開幕戦後はメンタルのトレーニングを重ねて、クルマのセットアップや状況に対応する精神力を養ってきた。事前に50kmのテストしかできなかったけど、今回素晴らしいマシンを用意してくれたチームとピレリ、すべての人々に感謝したい」
その後方、2.2秒差でカエタノビッチを追った3番手のマガラエスだったが、ダンプコンディションとなったオープニングのSS7で遅れ、SS9を前に9.1秒までギャップが拡大。
しかし、午後のループでカナリア諸島の道に適応してみせたマガラエスは、4.1秒まで差を詰めたものの、カエタノビッチもこれに反応し、最終的に6.4秒差でポジションを守ってみせた。
ポディウム以下、4位にはヒュンダイi20 R5を投入した地元スペイン人のイヴァン・アレスがヒュンダイにERC最上位をプレゼント。5位にはプジョー・ラリー・アカデミーのドライバーとしてERCアンダー28エントリーとなるホセ-マリア"ぺぺ"・ロペスの208T16が入った。
次戦となる第3戦は、2014年からERC復帰を果たしている伝統のアクロポリス・ラリーとなり、6月2~4日にラミアを中心に“カー・ブレイカー・ラリー”として有名なグラベルステージ群が待ち受ける。