F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。
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☆1 ダニール・クビアト
トラブルもなく、とくにミスもないのに初日から超低空飛行、予選20位は不可解。カルロス・サインツとのタイム差も大きかった。
決勝で生き返ったのは45℃まで上昇した路面温度にタイヤがマッチしたから。オーバーテイクを決め、ケビン・マグヌッセンに仕掛け9位入賞、自信を取り戻す。
☆2 ダニエル・リカルド
全セッション6位、チームメイトに後れをとったのはセクター3。シケイン出口から最終コーナーでトラクションがかからず、スライド傾向が。中間守備的なレース徹してバルテリ・ボッタス脱落により3位。次戦モナコは失速したセクター3を反省するところから始めないと・・。
☆2 ルイス・ハミルトン
アイルトン・セナまであとひとつの64回目PP。ジム・クラークを抜くハットトリック12回達成。素晴らしい記録はかなりきわどいものだった。予選はベッテルがセクター3で痛恨のミス、0.051秒上回った。
苦しい展開の決勝は36周目VSC解除のタイミングでピットインした戦略が成功。中盤にはチームメイトのアシストもあった。こうしてみると55勝目は「辛勝」そのもの、表彰台で見るからに疲弊した様子がうかがえた(彼自身、今年きびしい減量をしているのではないか)。
☆3 エステバン・オコン
予選Q2までセルジオ・ペレスに先行、課題のアタック・ペースアップに取り組んでいた。スタートを慎重にさばき、ペレス同様にタイヤをケア、自己最高5位で一貫性をまた示す。初モナコGPを注目したい。
☆3 パスカル・ウェーレイン
均等割りワンストップ戦略、33周ソフトでロングスティントは難しいミッション。「BOX!」の指示がぎりぎりだったため、ピット入り口の違反走行に5秒ペナルティ。
それを補う後半ペースによって復帰3戦目に8位入賞ベストレース、ペーター・ザウバー元代表も来たかいがあった(正式決定ホンダとの次期交渉も含めて)。
☆3 ニコ・ヒュルケンベルグ
11・12・9・8・6位。マシンとPUの現状パフォーマンスを、しっかりこの結果に結び付けている。120戦して表彰台がない不運な彼、「今日のレースはラッキーな部分があった」と謙遜(?)。リヤ・ウイングとバージボードのアップデート効果は確認された。
☆3 セバスチャン・ベッテル
フルパワー・モードで挑む予選、フェラーリPUの進化は著しくメルセデスに接近。ただ感じるのはドライバビリティ、彼もキミ・ライコネンも全力アタックすると細かなミスが、ラップをまとめにくい傾向がある。
セクター・ベストをそろえられず2位と4位に回ったのはそのせい。終盤追い込めなかったのは燃費か、それでもハミルトンを6点リード。
☆4 バルテリ・ボッタス
これまでCE交換が中国GPであったがここで初めて、PUに問題を抱えた。金曜夜にチームは残業した結果、新「ステージ2」PUを断念して5レース使用の従来PUに戻す。
それで3位グリッド確保は上出来だろう(セクター・ベストは無かった)。1コーナーでライコネンと接触、ペナルティはなかったがダメージはあったはずだ。序盤ペースが上がらず、守備的ミッションに従いベッテルの壁になってハミルトンをアシスト。
39周目、昨年マレーシアGP以来10戦ぶりにメルセデスPUに致命傷。それでもピットに戻ってから首脳陣と談笑するなど、昨年までのニコ・ロズベルグとは全く違う従順な態度がボッタスらしい。
☆4 セルジオ・ペレス
4コーナーと9コーナーでの追い風に苦しみながら今季ベスト・タイの予選8位を確保。彼の巧みなレースメイキング術は①確実なスタートダッシュ、②1コーナーの見切り、③ポジション固め、④想定ペース維持に集中。
単独走だと難しいのにメキシカンのメンタルは強靭だ。ダブル入賞22点、昨年モナコGPに次ぐ大量点で中間チームをリード。
☆4 カルロス・サインツjr,
誰にも得意コースは必ずある。それが母国なら最高、3年ずっとチームメイトを予選/決勝で破ってみせた。5コーナー脇に設けられたサインツ応援スタンドは大賑わい。
接近戦を続ける彼のトロロッソはタービュランスの影響が少なく見え、ジェームズ・キーテクニカルディレクターのSTR12コンセプトは的をついている。
☆5 フェルナンド・アロンソ
2勝と2位4回、3位1回、表彰台にこれだけ立ってきた。金曜いきなりエンジン・ブローでも、今年あれほどファンが詰めかけたのはインディ500挑戦に旅立つ英雄の送別会だから。
チームのベスト・タイ予選7位を獲得、シャシー・アップデート効果を引き出し、強風下にコース幅いっぱいを使う技は絶妙だった。決勝で最速ラップ4位、セクタータイム6/4/3位(トップスピードは9位)、母国ファンに応えたアロンソは日曜夜にZETTA・JETチャーター機でインディアナポリスへ直行。
月曜15日、最初のルーキー走行セッションで1位221.624MPH、昨年大会の最速リーダー・ラップと1.095MPH差(!)。この四日間ぶっとおしの行動力に☆を5つ。