横浜駅には多くの路線が乗り入れている。みなとみらい線と東横線もその1つだ。両路線はそれぞれ横浜駅を始発・終着駅としているため、2004年から直通運転を開始している。利用者にとって利便性が大きい一方で、この仕組みを悪用して無賃乗車を試みる人も後を絶たない。
みなとみらい線を運営する横浜高速鉄道は5月17日から3日間、「不正乗車防止運動」として、折り返し乗車をする利用客への声掛けを強化している。
5年前から顕在化 一時的には減っても「被害は無くならない」
問題となっているのは、横浜から渋谷方面へ行く東横線ユーザーの一部による、みなとみらい線の無賃乗車である。
横浜駅から渋谷方面へ行くには、東横線の上りに乗車する必要がある。しかし、既にみなとみらい線管轄内で多くの人が乗って車内が混んでいるため、横浜駅から乗っても座ることは難しい。
そこで、一度あえて下り方面に乗って、同じホームに上下線が走る「みなとみらい駅」で乗り換え、空いている座席を確保しようという乗客がいるのだ。
こうして座席を確保した乗客はみなとみらい駅で改札を通っていないため、横浜駅とみなとみらい駅間の往復運賃360円は払わず、東横線の運賃だけ支払っていることになる。つまり、みなとみらい線には一銭も入っていない。
横浜高速鉄道の担当者は、5年前からこうした不正乗車が目立つようになったと頭を悩ませる。
「例年、月2回ほど防止運動として、駅員や警備員によるお声がけを強化しています。一時的には減りますが、相変わらず被害は無くなりません」
今回は駅員と警備員合わせ26人で見張りをしている。不正乗車が発覚し精算対象になった乗客は、今日だけでも19人。ただし、この数字は不正乗車と認めた人の数であり、中には「間違えて乗ってしまった」と述べる乗客もいるそうだ。担当者は
「仮に渋谷駅から下り方面に乗って、乗り過ごしてみなとみらい駅まで来てしまったというケースなら理解できます。同じ下り方面ですから。でも、横浜駅から上り方面へ向かう定期券を持つお客様が、誤って下り方面に乗るというのは、常識的に考えにくいです」
と訝しがる。
改札を通ったかではなく、「移動したかどうか」が運賃発生の肝
一方でネットでは、「なぜだめなのかわからない」「改札を通っていないのだからよいのではないか」といった声も聞かれている。
国土交通省の定義では、運賃は「人又は物品の輸送に対する対価」と定められている。つまり、改札を通ったか否かに関わらず、車両に乗って移動した時点で運賃は発生していると考えるのが筋だ。
横浜高速鉄道ではこうした運賃の概念についても、ポスターやスポット放送で毎日呼びかけているというが、効果は薄い。
「昨年も1年間で19回防止運動をし、約150人の方にお支払いしていただきました。声をかけたうち6割程度の方が認めた計算です。一昨年も同程度の人数でした」
横浜高速鉄道は18日、19日も通勤時間帯の7時から8時半にかけて見回りや声掛けを強化する。
「お客様の中には、東横線の定期とは別に、横浜・みなとみらい間の定期も購入して乗車される方もいらっしゃいます。無賃で折り返し乗車をされる方は、そうしたお客様に対しても不正を働いていると自覚していただきたいです」