5月18~21日に行われるWRC世界ラリー選手権第6戦ポルトガルに向け、参戦するドライバーたちが意気込みを語った。
今シーズン、ヨーロッパ圏で行われる初のグラベル(未舗装路)イベント、ラリー・ポルトガル。1973年のWRC開催初年度からシリーズの1戦を務める伝統ある戦いだ。
イベントは18日夜、サービスパークが設けられるマトジニョスの東側にあるロウサダでのスーパーSSで開幕。翌19日はマトジニョスの北部~北東エリアでSS2~9の8SSが、20日は東部~東北部エリアでSS10~15の6SSが行われる。
競技最終日となる21日は東部~東北部エリアでSS16~19の4SSを実施。なかでもSS16とSS19に設定されているファフェは大会名物のジャンピングスポットがあることで有名だ。
ラリー・ポルトガルの路面は、砂状の軟らかな路面と岩盤が露出した硬い路面が入り交じるコンディション。前者ではタイヤのグリップ感を得にくく、後者ではタイヤの摩耗が急激に進むため、装着するタイヤのコンパウンド選びが重要になってくる。
また、細かな砂利や粉塵が路面の表面を覆う“ルーズグラベル”では、出走順が遅いほど、路面がクリーンになりタイムが出しやすくなるほか、各ステージを再送する際は、コース上に深い轍ができていることも多く、各ドライバーは車高を調整して挑む必要がある。
最上位クラスはMスポーツ、ヒュンダイが前戦同様3台体制で参戦。シトロエンはレギュラードライバーの3名に加え、プライベーターのカリッド-アル・カシミをスポット投入。4台体制で挑む。
TOYOTA GAZOO Racing WRTは、レギュラーのヤリ-マティ・ラトバラ、ユホ・ハンニネンに加え、テストドライバーのエサペッカ・ラッピがヤリスWRCで実戦デビュー。今季初の3台体制となる。
また、今大会のWRC2クラスにはトヨタの若手ラリードライバー育成プログラム、『TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジプログラム』に参加している新井大輝、勝田貴元が参戦。トミ・マキネン・レーシングのフォード・フィエスタR5をドライブする。
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■Mスポーツ
●セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)
「ラリー・ポルトガルは毎年戦うのを楽しみにしている1戦だ。(コドライバーの)ジュリアン(・イングラシア)と僕が初めて勝利したイベントであり、そのほかにも多くの成功を収めてきた。本当に多くの思い出が詰まっているんだ」
「ポルトガルの人々は心からモータースポーツを楽しみ、熱狂している。ファンが作り出す雰囲気もポルトガルならではのものなんだ。こういった環境下では、ドライバーとして全開までプッシュして、勝利を掴み取りたいと願うものだ」
「今年は例年以上に僅差の争いになっていて、どのチームにも優勝のチャンスがある。初日に道を切り開く先頭走者を務めるから、難しい戦いを強いられるかもしれないけど、僕たちはポルトガルに高い目標を掲げているし、チャンピオンシップでのリード拡大という目的を持って望む」
「この数カ月、ラリー・ポルトガルに向けてさまざまな開発テストを重ねてきた。その成果が間違いなく活きてくるはずだよ」
●オット・タナク(フォード・フィエスタWRC)
「ラリー・ポルトガルは僕が心待ちにしていたグラベル(未舗装路)連戦の初戦だ。ポルトガルの道は走っていて楽しいし、過去にいいペースで走ったこともある」
「ここ最近、さまざまな開発を行ってきたから、この後続くグラベルイベントでは連続表彰台を期待している。ラリー・ポルトガルでも、表彰台に上がることが目標で、どこまで戦えるか楽しみだよ」
「設定されるSSは、ブラインドコーナーやジャンピングスポットが多く、曲がりくねっていてテクニカルなんだ。ただ、(SS16、19に設定されている)ファフェのように楽しみながら走れる高速ステージもある。ここを走っているとファンの熱狂ぶりが伝わってくる」
「今のところライバルとは僅差の争いだから、好成績を残すには自分たちのラリーに100%集中する必要しなくては」
●エルフィン・エバンス(フォード・フィエスタWRC)
「いつもラリー・ポルトガルではいいペースで走れるんだけど、いろいろな不運が重なって、結果につなげることができなかった」
「(前戦の)ラリー・アルゼンティーナで勝利目前まで近づいたことで、僕たちは自信に満ちているし、出走順もいい。好成績を出せるはずだ」
「アルゼンチンで、マシンを含めたトータルパッケージはしっかり機能した。ポルトガルでも、この流れを再現したいね。天候にもよるけど、路面コンディションは(アルゼンチンと)あまり変わらないし、軟らかな路面は午後の走行では荒れてくるだろう」
「2戦連続で好成績を残すには、自分たちのパフォーマンスを限界まで引き出す必要がある。早々にリズムを掴んで自信を持ってステージを走ることができれば、何が起きても不思議ではないよ」
■ヒュンダイ/ヒュンダイ・モータースポーツ
●ヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)
「これまでのところ、2017年シーズンは僕たちが望んでいたような形にはなっていない。去年の成績を考えれば、ラリー・アルゼンティーナはひどい結果だった。だから、ラリー・ポルトガルで流れを変えられると信じているよ」
「残念ながら、コドライバーのジョン(・ケナード)は股関節の状態が悪化してラリーには参加できないけど、彼がチームの一員として帯同してくれることは嬉しいし、去年ラリー・ポルトガルを戦っているセブ(セバスチャン・マーシャル)が代役を務めてくれることに感謝している」
「ポルトガルにはラリーを愛している熱狂的なファンが多く、独特の雰囲気が漂う。こういった観客の前で、戦えることは最高だね。今度こそ、僕の2017年シーズンをスタートさせるために、全力を尽くす」
●ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)
「(第4戦)ツール・ド・コルスと(第5戦)アルゼンティーナを制したことで波に乗れている。ただ、チャンピオン争いは接戦だから、引き続き自分たちの走りに集中していくことも必要だ」
「第5戦でのエルフィン(・エバンス)との差はWRC史上まれに見る僅差だった。確実なんてものは存在しないことの証だよ」
「僕たちにとって、ポルトガル北部を中心とする現行のステージ構成は慣れないものだ。過去2シーズンしか戦ったことがないからね。かなり難しい戦いになるだろうけど、ラリーを戦うことを楽しみにしている」
「自信を持って新型マシンを操ることができれば、僕たちは速さを発揮できる」
●ダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)
「(母国の)スペイン近郊で行われるから、僕にとってラリー・ポルトガルは特別なイベントになっている。僕たちを応援してくれる観客も多いし、彼らの声援は後押しになる」
「またチームにはポルトガル出身のメンバーが多いから、チームにとっても特別な1戦なんだ。ファフェのジャンピングスポットなど、名物スポットではファンからの熱い声援を肌に感じるほどだよ。(ファフェでのステージを含む)競技最終日には彼らの声援に応える走りを見せたいね」
「ラリー・アルゼンティーナは残念な結果に終わったから、ポルトガルではヒュンダイi20クーペWRCのポテンシャルを100%発揮して、ふたたび表彰台争いに加わることを望んでいる」
■シトロエン/シトロエン・レーシング
●クリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)
「ラリー・アルゼンティーナでは、何ひとつ計画通りにいかなかった。時折、こういったことが起こるから、引きずらないようにしなくてはいけない」
「自信に満ちているろは言えないけれど、ラリー・ポルトガルへ挑む準備は整っている。先日行った事前テストでも、僕たちが進んでいる方向は正しいと確信したよ」
「ポルトガルでは2016年に勝利しているから、ふたたび戦えることを嬉しく思う。熱心なファンが多くて、大会中は独特の雰囲気に包まれる点も魅力的だ」
「ステージ構成については、さまざまな変更が加えられているから、ペースノートを一から作り直す必要がある。ラリー本戦と同様、(下見走行の)レッキから集中していくことが重要だね」
●クレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)
「(前戦の)ラリー・アルゼンティーナ同様、ポルトガルも僕にとって道の場所だから、冒険に挑むような心境だ。2016年にレッキ走行をしているけど、実戦の経験はないからね」
「(第8戦)ポーランドや(第9戦)フィンランドのような高速グラベルラリーと比べると、ポルトガルのような路面コンディションに対し、僕のドライビングスタイルには改善の余地がある」
「先週、イタリア・サルデーニャで行ったテストは順調だった。アルゼンチンで学んだことを基に、いくつかの部分に改善を加えた。ポルトガルではマシンのフィーリングが向上するはずだよ」
●ステファン・ルフェーブル(シトロエンC3 WRC)
「ここ数戦のイベントと違い、このラリー・ポルトガルの経験は豊富なんだ。WRカーでもR5マシンでも戦ったことがあり、いい経験を積むことができている」
「道幅が広く、アベレージスピードが速いステージは、走っていて最高の気分になる。特に大会最長距離の(SS12、15)アマランテがお気に入りなんだ」
「競技初日の出走順も上位を狙えるポジションだから、そのアドバンテージを最大限に活用したい」
●カリッド-アル・カシミ(シトロエンC3 WRC)
「最後にWRCに参戦してから半年以上が経過しているから、充分に注意してラリー・ポルトガルに挑む。それにシトロエンC3 WRCで挑む初めてのイベントで、これまで乗ってきたWRカーとはまったく違うものが待ち受けているだろう」
「僕の目標は大きなリスクを冒さず、自信を深めていくことだ。自分のお気に入りのラリーに出場できることは嬉しいね」
「ポルトガルは、いつも独特な空気が漂う。ポルトガルのファンは熱心に応援してくれるし、特にファフェのジャンピングスポットでは熱烈な歓迎を受けるんだ」
■トヨタ/TOYOTA GAZOO Racing WRT
●ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)
「前戦(ラリー・)アルゼンチンで、グラベルラリーでは初日の結果がとても重要であるということを学んだ。努力してトップ5で初日を終えることができれば、翌日は有利な遅い出走順で走ることができるからね」
「だから、ポルトガルでは初日に上位につけることが目標になる。もしも雨などで初日の路面状態が悪い場合は、選手権ランキング順により初日2番手スタートとなる僕たちは、道が荒れる前に走れることになり、有利になるかもしれない」
「ラリーを前に、僕たちはダンパーと車高のセッティングに注力し、ラフな路面コンディションでも最大の性能を発揮できるようにクルマを改善してきた」
●ユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)
「僕は天気が良い時にテストを行なうことができた。テスト時はとても暖かく、サスペンションやデファレンシャルに関していくつか新しいことを試したよ」
「ラリー・ポルトガルには以前出場したことがあるけど、北部のステージを走るのは今回が初めて。道はきっとルーズグラベルに覆われていると思うから、初日は私の遅いSS出走順が有利に働くことを期待している」
「ポルトガルのコースは、道がそれほどラフではないことを除けばアルゼンチンに少し似ているから、学んだことを活かし進化に役立てたいと思う」
「同じコースを2回目に走る時は路面条件が少し難しくなっていると思うから、注意して走行する必要があるだろうね」
●エサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)
「これまでテストを重ねてきたけど、実戦の場はまったく違うものになると思う。このような機会を長い間待っていたから、ヤリスWRCで初めてラリーに出場することになって、本当に心が躍っているよ」
「しかし、あくまでもチームの仕事として走るから、僕がすべきはクルマの開発をさらに進めるため、できるだけ多くのデータを収集すること。そのためには、完走することが何よりも重要になる。もっとも、ポルトガルのような難しいラリーで完走するのは決して簡単ではないけどね」
「自分の経験値を増やすためにも、すべてのステージを走る必要があると胸に刻んでる。とにかく冷静な気持ちを保ち、集中してラリーに臨みたいと思っているよ」