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旭化成が自動車産業に本格参入。京大発EVベンチャー、GLMと新世代コンセプトカーを開発

2017年05月17日 17:52  AUTOSPORT web

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旭化成と京都大学発のEVベンチャー、GLMが共同開発したEVコンセプトカー「AKXY」
総合化学メーカーとしてお馴染みの旭化成と、京都大学発の電気自動車(EV)ベンチャー、GLMがスポーツカーとSUVを融合させたEVコンセプトカー「AKXY(アクシー)」を開発。東京都内で走行披露を兼ねた発表会が開催された。

 クーペスタイルのコンセプトEV「AKXY」は、ガルウイング方式を採用した変則的な3人乗りEV車両。プラットフォームはGLMのトミーカイラZZのものを採用し、最高出力305馬力のモーターも同じものを搭載している。

 発表会では、旭化成の常務執行役員 兼 高機能ポリマー事業本部の吉田浩氏がこのAKXYに同乗して登壇するなど、動くコンセプトカーとしての完成度はデザインを含めてかなりの高さのようだ。

 AKXYのサイズは全長4,685mm×全幅1,813mm×全高1,562mmと、昨今人気の小型クロスオーバーSUVと同型サイズとあって使い勝手が良さそう。もし市販されれば、近未来的な外観と合わせてかなり人気が出そうだが……実はこのAKXY、現在のところ市販の予定はなさそうだ。

 というのも、このAKXYの開発目的は、総合化学メーカーである旭化成がEVに必要な自動車関連素材・部品・システムといった最先端技術をアピールすることが目的であり、その最先端技術を今後の自動車業界、自動車メーカーに売り込むことを狙いとして製造されているのだ。

「旭化成は現在、中期経営計画の中でコネクト、融合をキーワードに多角的な事業と多様な人材の結集を促進し、新事業の創出、さらなるグローバル展開を推進しています。なかでも、需要分野に位置づけております自動車関連事業におきましては2025年度の売上高3000億円を目ざし、各事業それぞれの活動に加えてコネクトのためのふたつの新しい組織を昨年4月に立ち上げております」と吉田執行役員。

 その旭化成の新組織のうちのひとつが、自動車分野への本格参入の軸になるオートモーティブ事業推進室だという。実際、AKXYには金属材料の代替えとしてエンジニアリング樹脂の採用による軽量化や、人工皮革のカーシート、音声処理技術を利用した社内コミュニケーションシステムなど、旭化成が扱う部材やシステムで27品目を搭載するに至っているという。

 総合化学メーカーながら、実は半導体やリチウムイオン二次電池用セパレーター、鉛蓄電池用セパレーターやセンサー製品、電子コンパスなど、エレクトロニクス事業でも世界ナンバー1のシェアを誇る製品が多いという旭化成。

 EVは部品点数が少なく、既存のガソリン車より参入障壁が低い。社会的なニーズもこれから高まることは間違いなく、今後もIT企業や電気メーカーなど、さまざまな企業が連携してEV事業に参入してくることが予想される。その中で旭化成、そして共同開発したGLMともに、今後のEV事業のシェア拡大を狙って、このAKXYの開発で技術力をアピールしたい狙いだ。

 このAKXYで採用された技術、さらにはもっと最先端のEV技術がいずれ、モータースポーツの世界でも搭載されることになるかもしれないが、そのタイミングはもしかしたら予想以上に近い未来なのかもしれない。