F1のCEOであるチェイス・キャリーは、スペインGPでフェラーリファンの少年がキミ・ライコネンに会えるよう計らうことは、前オーナー時代には起こり得なかったことだと考えている。
レースを生中継していたテレビ映像に映し出されたのは、ライコネンが1周目で早々にリタイアしたことで号泣する、トマ・ダネル君の姿だった。この姿はソーシャルメディアにも出回り、その後F1とフェラーリのスタッフが少年とその家族を観客席から探し出し、パドックに招待した。
この対応は幅広い称賛を集めている。リバティ・メディア代表のキャリーは、これはバーニー・エクレストンとCVCがF1を支配していた時代には提供できなかった「特別な瞬間」なのだと説明する。
「我々は落胆する小さな少年の映像を目にした。そして、スタッフたちは自らの判断でこの対応を行なったのだ。そうした自由な感覚は、1年前なら彼らも持っていなかっただろう」
「私が少年を探すように命じたのではない。自主的に行なったスタッフがいたということだ。彼らは特別な瞬間を作ることができると考え、それは現実のものとなった」
リバティはスペインGPをF1の週末を、観客にとってより充実した体験ができるものにするための計画を立てていた。他のいくつかのカテゴリーと比較して、その部分が立ち遅れていたからだ。
その結果、カタロニア・サーキットの“ファン・ゾーン”には、ジップラインやピットストップチャレンジ、ミナルディのF1マシンに搭乗体験できるチャンスなど、様々な設備や企画が登場した。
ルイス・ハミルトンとセバスチャン・ベッテルが優勝をかけて接戦を演じたレース展開とも相まって、スペインGPはキャリーにとって非常に満足のいく内容となった。
「バルセロナでは新しい形のイベントを行なったわけではない。だが数多くの企画を投入し、ほとんどの人はそれについて、新たなエネルギーや刺激を創造したと評してくれた」とキャリーは言う。
「様々な関係者同士をつなげることで、今まではなかった素晴らしい熱狂を生み出せた。これまでは、誰とも連携できないと考えて不満を抱く人たちもいただろうと思う」
「今後いくつかの案件については、他のことよりも早く進むのは間違いない。多くの出来事があり、なかには(ベッテルとハミルトンが)競り合いながらピットを飛び出してきたような素晴らしい瞬間もあった。それらについては、我々は成り行きに任せていた」
キャリーは、F1のファン向けの施策には、あまりにも時代遅れなものがあると認めている。例を挙げるならば、チームのシャツを積み上げて売るだけの販売エリアは「20年前の遊園地みたいなもの」だと話す。
ファンのための、より充実した体験づくりが優先事項であるとしつつも、リバティとしてはそれをいかに収益化するかに集中していくとキャリーは語った。
「ジップラインのスポンサー権などは、おそらく5倍の値付けでも売れるだろう。そうなれば利益になる。実際には行っていないが、スポンサーになりたがっている適切な企業がいるだろうことは想像できる」
「施策を正しく実行すれば、支出ではなく収入が得られる。10万人を超える観戦客に加えてテレビの放映もある。人々は携帯電話のようなものを持っていて、こうしたイベントでは写真を撮ったりするのだから、そのための機会を作ればいい」
「こうした機会を利用したいと考える人は大勢いるので、我々にとってはそれが収益を得るチャンスになるのだ」