長時間労働が問題視されているが、中々実態が見えづらい「隠れ残業」も大きな課題だろう。IT企業アイキューブドシステムは5月15日、「労働環境とストレスに関する実態調査」の結果を発表した。
調査は3月30日~31日、関東地方1都3県に住む22~59歳のオフィスワーカーで月の平均残業時間が20時間以上である男女824人を対象に実施した。
隠れ残業をしている人の3人に2人が「会社を辞めようと思っている」
「仕事を家に持ち帰って行っているか?」という質問に「ある」と答えた人は44.8%。持ち帰り残業をしている人に、社外で月平均何時間仕事をしているかと聞くと最多が「5時間未満」(50.8%)だった。
次いで「5~10時間未満」(22.8%)、「10~20時間未満」(14.7%)と時間が増えるにつき割合は減っている。しかし少数ではあるが「80~100時間未満」(0.6%)、「200~300時間未満」(0.3%)という人もいた。
上記回答者に、これらの「持ち帰り残業」を会社に申告していない時間はあるかと聞くと83.4%が「ある」と回答している。企業が把握していない「隠れ残業」が横行していることが分かった。
また隠れ残業をしている人の65.2%は「会社を辞めよう」と考えており、隠れ残業をしていない人(55.7%)よりも10ポイント近く高かった。深夜・早朝も、休日も仕事をしていれば会社自体に嫌気がさしてくるのももっともだ。
また、フランスでは2016年5月に労働者が勤務時間外や休日に仕事上のメールなどへの対応を拒否できる「つながらない権利」が成立した。この法律について賛否を聞くと、88.8%が賛成と回答し、これ以上「持ち帰り残業」を増やしたくないという切実さが見て取れた。
しかしその中の半数以上は「基本的に賛成だが実際にはつながらないと困るシーンも多いと思う」と感じているようで、「仕事に支障が出るので反対」と回答した人も11.2%いた。
医師「デバイスがあると見てしまうのが日本人の性格」
今回の調査結果について三宅琢医師は「残業を抑制しようとする社会的な流れがある」とした上で、インターネットが普及しPCやスマートデバイスが導入されたことで仕事を持ち帰る状況が起こりやすくなっていると指摘。場所を選ばずに仕事が出来るメリットはあるが、
「そこにデバイスがあると、ついつい見てしまうというのが日本人の性格だと思います。したがって、管理側やデバイス側で使用におけるルールを作らないと、ICT導入が『持ち帰り残業』や『隠れ残業』を助長する温床になりかねない」
と分析する。しかしルールの整備が十分にできておらず、運用・管理が本人や現場任せになってしまっているのが実態だ。
残業代の支払われない「隠れ残業」は従業員の企業・業務に対するモチベーションの低下につながる。疲労はもちろん、それ以上に「自身の業務に関する適正管理がされていない」ことに対する不信感が募るという。それがメンタル不調やパフォーマンスの低下にもつながっていく。三宅医師は「隠れ残業」をしている人の約7割が退職意向を持っているのも「隠れ残業があるかもしれない状態」を放置している企業の風土が問題なのではないか、と指摘している。