2017年05月15日 14:34 弁護士ドットコム
「アリさんマーク」で知られる引越社のグループ会社「引越社関東」(東京都)で営業職だった男性社員が、労働組合への加入をきっかけに「シュレッダー係」に異動させられた問題で、男性が加入する労働組合「プレカリアートユニオン」の清水直子執行委員長は5月15日、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「会社側から、全面的な和解に向けた話し合いをしたいという提示があった」と話した。
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和解協議中は街宣活動をしない取り決めのため、組合側は、この日予定していた同社前での「大抗議アクション」を急きょ中止した。
男性は、残業代が支払われなかったうえ、営業車運転中の事故で弁償代を請求されたことから、2015年3月に「プレカリアートユニオン」に加入。会社側は同年5月、男性を営業職から「アポイント部」に配置転換し、さらに同年6月、一日中「シュレッダー」をかけるだけの仕事に異動させた。
男性が同年7月、異動命令を無効とする訴訟を起こすと、会社側は同年8月、「会社の名誉を害して、信用を傷付け、莫大な損害を与えた」として、男性を懲戒解雇した。その際、男性の氏名と顔写真入りの「罪状」と題した紙を「引越社」グループ全店に貼り出した。
その後、解雇が撤回されて、男性は復職したが、現在もシュレッダー係のままだ。男性の訴訟をめぐっては、東京地裁から5月24日に和解案が示される予定で、踏み込んだ協議がおこなわれる方向だという。労働組合側は、(1)男性を営業職に戻すこと(2)慰謝料(3)差額分の賃金(4)謝罪――などを条件に盛り込むことを求めている。
引越社をめぐっては、シュレッダー係の男性のほかにも、全国の社員・元社員約40人が弁償金返還や残業代支払いなどを求めて提訴している。今年3月には、名古屋地裁が、会社が組合活動に不当介入したとして、損害賠償計50万円を支払うよう命じた。今回、会社が提示した「全面的な和解に向けた話し合い」は、同社の労務管理全般に関するものになるという。
(弁護士ドットコムニュース)