2017年05月15日 10:04 弁護士ドットコム
完成イメージの絵を持って美容院に行ったのに、髪を切られすぎてしまった。返金してもらえるのかーー。インターネット上のQ&Aサイトにこんな相談が寄せられた。
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投稿者は、美容院に完成イメージの絵を持って行き、手入れをしやすい髪型にしてほしいと注文した。しかし、完成イメージの絵よりも短く切られ、手入れもしづらい髪型になってしまったという。
このような場合、返金をしてもらうことはできるのだろうか。また、仕上がりのイメージを伝えずに「お任せで」髪を切ったような場合に、その仕上がりが気に入らなかった時はどうなるのだろうか。前島申長弁護士に聞いた。
「結論から言えば、今回のケースでは、代金の返金は難しいでしょう」
なぜだろうか。
「美容院で髪を切る場合、お客と美容院との契約をどのようにとらえるかについては、民法上明文がありません。美容施術を事実上の事務処理ととらえ、『準委任契約』(民法656条)とする考え方もあるようですが、一般的には、『請負契約』(民法632条)ととらえるのが自然だと思われます」
請負契約ととらえた場合には、「イメージと違う」髪型となった結果について、美容院は何らかの責任を負うことになるのか。
「『請負契約』ととらえた場合、報酬の発生には、仕事の完成が必要となります。
本件では、完成イメージより短く切られ、手入れがしづらい髪形になってしまったとのことです。しかし、美容師に伝えた際に渡したのは、正確に伝えられる写真のようなわかりやすいものではありませんでした。また、出来上がった髪形が、当初予定していたイメージより多少短いだけでは、『仕事の完成はなされている』と評価できます。したがって、代金の返還は難しいと思われます」
では今回は、あきらめるしかないのだろうか。
「例えば、前髪の一部がはねてまとまらないような場合などケースによっては、手入れをしやすいように修正してもらうことは可能と思われます(「瑕疵修補請求権」民法634条)。
反面、出来上がった髪形が、当初指示していた場合とまったく異なるようなケース(例えばセミロングを依頼しているのに、ショートカットにされたような場合)については、そもそも仕事の完成がなされていないと評価されますので、代金の返還が認められると思われます。 次に、仕上がりのイメージを伝えずに『お任せ』で髪を切ったような場合には、一応、髪を切って整えるという美容施術はなされていますので、仕上がりが気に入らなかったとしても、代金の返還はできないと思われます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
前島 申長(まえしま・のぶなが)弁護士
前島綜合法律事務所代表弁護士 大阪弁護士会所属交通事故・労災事故などの一般民事事件、遺産分割・離婚問題などの家事事件を多く扱う。交通事故については、被害者側の損害賠償請求の他に加害者側の示談交渉・刑事弁護も扱う。
事務所名:前島綜合法律事務所
事務所URL:http://maeshima.lawer.jp/