5月14日、F1第5戦スペインGPの決勝が行なわれた。日曜日は週末で一番の暑さとなり、気温24度、路面温度43度と、肌を焼くような強い陽射しによってタイヤにとっては厳しいコンディション。
ソフトタイヤはミディアムに較べて2~2.5秒と格段に速いものの、熱によるデグラデーションを考えれば寿命は20~25周程度とみられており、ロシアGPとは対照的なマルチストップの決勝になりそうな予感が漂う。風は強くターン9からのバックストレートで追い風になる難しい風向きだ。
予選19位のストフェル・バンドーンはESとCEにセンサートラブルが見つかったため今季5基目となる新品に交換して計10グリッド降格ペナルティを受け、最後尾から決勝に臨む。ほぼ全車がソフトタイヤで、グリッド後方のジョリオン・パーマー、ダニール・クビアト、バンドーンのみがミディアムでスタートした。
スタート加速で優ったセバスチャン・ベッテルがターン1までにポールシッターのルイス・ハミルトンの前に出てホールショットを奪ったが、その後方ではターン1のイン側にいたバルテリ・ボッタスに後ろからヒットされたキミ・ライコネンがマックス・フェルスタッペンに接触し、2台ともにサスペンションにダメージを負ってリタイア。
その直後にいたフェルナンド・アロンソはターン2でアウト側からフェリペ・マッサを抜こうとして接触しコースオフして13位まで後退してしまう。
これで順位はベッテル、ハミルトン、ボッタス、ダニエル・リカルドのトップ4に、5位セルジオ・ペレス、6位エステバン・オコンとフォース・インディア勢、そして7位にニコ・ヒュルケンベルグ、8位ケビン・マグヌッセン、9位カルロス・サインツJr.、10位ロマン・グロージャンというトップ10になり、アロンソは1周目のうちザウバーを抜いて11位まで挽回してきた。
首位に立ったベッテルはじわじわとハミルトンとの差を広げていき2.5秒に。これに対してメルセデスAMG陣営は2ストップ作戦から3ストップ作戦への変更を検討する。
その後方のボッタス、リカルド、フォース・インディア勢の間隔もそれぞれ徐々に開いていき、アロンソは10位グロージャンに引っかかって本来のペースで走ることができないでいる。
12周目にアロンソ、バンドーン、ストロールがピットインし、ソフトタイヤに交換。続いて翌13周目にはその前で順位を争っていたマグヌッセンとサインツが同時にピットインし出口でサインツがグリーンにはみ出してあわやという場面も。アロンソは13位まで後退し、今度はピットストップを終えたクビアトに引っかかってしまう。
14周目に首位ベッテルがメルセデスAMG勢に先んじてピットインし、リカルドの後ろでコース復帰するがすぐさまDRSでパスして3位に上がった。一方のハミルトンは首位に立ってステイアウトし続けるが、1回目のピットストップを終えた周回遅れが出始めてタイムロスを余儀なくされる。
ハミルトンは予定よりも早く21周目にピットインしてミディアムに交換し、最終スティントにソフトタイヤでベッテル追撃を試みる。
逆に、首位に上がったボッタスは第1スティントを伸ばして2ストップ作戦を採るとともに、ピットストップを終えたベッテルを抑え込んでハミルトンを援護。
しかし、ベッテルは25周目のメインストレートでイン側のダートにはみ出しながら豪快なオーバーテイクでボッタスを抜き去って首位を奪いとった。
ボッタスは26周目にピットインし、上位は首位ベッテル、5秒差で2位ハミルトンだが、ソフトとミディアムの差でそのギャップは1周1秒のペースで広がっていく。28秒後方の3位ボッタス、さらにその8秒後方の4位リカルドもミディアムタイヤで走行している。その13秒後ろにはフォース・インディア勢が手堅く入賞圏を走る。
34周目、バンドーンがインに飛び込んできたマッサに気付かず接触してしまい、右フロントサスペンションを壊してリタイア。これでバーチャルセーフティカー(VSC)が導入されてまだ2回目のピットストップを終えていなかった中団勢が揃ってピットへ。
メルセデスAMG勢はいったんはステイアウトしたものの、ハミルトンを36周目にピットへと呼び入れる。
しかし、それとほぼ同時にVSCが解除となってしまい、ハミルトンは何の特もなく普通にピットストップをしてしまう。
これでソフトに換えたハミルトンはもう1回ピットストップが必要なのに対し、ベッテルはハミルトンとのギャップが充分にできたため翌37周目にピットインしてミディアムに交換し最後まで走り切る戦略に出た。
ベッテルはピット出口でハミルトンとサイドバイサイドになるが、ターン1でリヤタイヤ同士を接触させながらも首位を守り切る。
ソフトを履くハミルトンはミディアムのベッテルに猛攻を仕掛け、巧みにディフェンスしていたベッテルを44周目のメインストレートで攻略に成功した。
これでいったんは1周2秒速いペースで走ったハミルトンだが、リヤのオーバーヒートを訴えてペースは鈍り、両者の差は2秒台で推移するが、53周目を過ぎたあたりからギャップが広がっていく。
後方では第1スティントを33周と長く引っ張ったウェーレインが7位に留まって善戦をするが、ターン2のコースオフ時にボラードのアウト側を走らなかったとして5秒ペナルティを科されているため、後方に数秒差で続く4台に抜かれる恐れがある。
それでもウェーレインは8位サインツを巧みに抑え、9位マグヌッセンよりも速いペースで走行して入賞圏内ギリギリのところをキープしている。
いっぽうのアロンソは、VSC直前の31周目にミディアムタイヤに交換してしまったためそのロスを被って14位を走行していたが、51周目にピットインしソフトタイヤに換えて現状打開を図る。ミディアムタイヤのウイリアムズ勢をオーバーテイクするが、エリクソンには追い付かず12位まで挽回するのが精一杯だった。
首位に立ったハミルトンは2位ベッテルを寄せつけることなく最後まで30周にわたってソフトタイヤを保たせ、そのままトップでチェッカードフラッグを受け今季2勝目、通算55勝目を挙げた。2位にはベッテルが4秒差で入り、チャンピオンシップリードを守った。
70秒以上遅れてリカルドが3位に入り今季初の表彰台を獲得。4位・5位にはフォース・インディア勢が入り、開幕5戦連続ダブル入賞を果たした。
6位ヒュルケンベルグ、そして7位でチェッカーを受けたウェーレインは5秒加算を受けてサインツに逆転されたものの8位フィニッシュでザウバーに今季初ポイントをもたらした。
64周目にターン4でクビアトのインを突いて接触したマグヌッセンはパンクで後退し、クビアトが9位。グロージャンが10位でなんとかポイントを獲得した。