アメリカンモータースポーツ最大のイベント、インディ500まであと2週間。その前哨戦として行われるインディカーGPは、インフィールドのコースを使用しオーバルの反対方向に走行して行われる。
コーナーなど変更されているが、かつてはF1グランプリもこのレイアウトで2007年まで行われていた。琢磨にとってはこのF1USGPは思い出のある場所。2004年のこのUSGPで日本人ふたり目の3位表彰台に上がった場所だ。
そこから13年もの月日が経っていると思うと感慨深いが、2010年にインディカーに来てからは、このインディアナポリスの表彰台には上がっていない。
■伸びないストレートスピード
前戦フェニックスではリタイアとなったが、その前のアラバマのレースから琢磨はストレートスピードの遅さを感じていた。
「エンジンだけではなく、ドラック(抵抗)もあるでしょうし、いろいろな要素が重なっているとは思いますけど、とにかくスピードが伸びない。160マイルを過ぎるとじわじわと遅くなるんです」。データは正直にマシンの遅さを伝えていた。チームメイトと比較すれば、なおのことである。
金曜日の2回のプラクティスも絶対的なスピード足りず、予選ではグループ2、11台の中でも最後尾。否応なしにQ1敗退である。
「メインとバックストレッチで0.2秒ずつ、インフィールドで0.1秒、明らかにチームメイトよりも0.5秒遅いですね。ウィル(パワー)が出した1分7秒7なんてぜんぜん見えない。別世界の話ですね」
琢磨は予選ベストが1分9秒3余りだったから、太刀打ちもできようがなかった。グリッドは予選最後尾の22番手。厳しいレースになるのは当然のことと言えた。
■粘り強い走りで決勝を戦う
スタート後の混乱をうまく抜けた琢磨は、22番手から17番手まで上がるが、その後最初のスティントはブラックでスタートしたもののリヤの内圧が上がらずに苦労する。
20周目にピットインしてからレッドに変えるとペースを上げて1台、また1台と順位を上げていく展開になった。ストレートスピードが伸びなくても、ピットワークで順位を上げたり、ニュータイヤでグリップのある間に前のマシンを攻略するのも手段だった。
レース終盤に入り、最後(3回目)のピットストップで後輪の脱着に手間取り4~5秒は失っていた。その後にジョゼフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)に攻略されたが、ピット作業が順調にいったとしてもタイヤのグリップが落ち燃費をセーブしながらの走行ではニューガーデンのペースには抗えなかっただろう。
それでも22番手スタートから、なんとか12位までポジションを上げチェッカーを受けた。悪戦苦闘の85周であった。
「厳しいレースでしたけども、レッドタイヤになってからはペースも良かったし、欲を言えばトップ10でフィニッシュしたかったですね。今回はチームメイトのライアンが3位に入ったし、みんな完走できているのでチームとしては良かったと思います」という琢磨。ドライバーズランキングもひとつ上げて、10位となった。
そしていよいよインディ500を迎えることになる。
「明日早速チームとミーティングがあって、月曜日からプラクティスになります。もうスケジュールができあがっていて、初日からグループランもするし、AJフォイトの頃は初日はシェイクダウンだったけど(笑)、僕としてもまったく違うインディ500になりそうですね。アロンソも来るし、とても楽しみにしています」
楽しみにしているのは琢磨本人だけでなく、日本を含めた全世界のモータースポーツファンが、今年のインディ500に注目しているはずだ。