F1スペインGP初日にフェルナンド・アロンソのパワーユニットに起きたトラブル。エンジンが完全にブローしてしまった今となっては、その原因を探ることはほぼ不可能となった。
ただし、オイルシステムに欠陥があったにせよ、エンジンそのものが壊れたにせよ、アロンソのエンジン本体周辺に「メカニカルなトラブルがあった」(長谷川祐介ホンダF1総責任者)ことには変わりない。いったい、アロンソのエンジンに何が起きていたのか?
原因として考えられるのは、エンジン本体以外のトラブルが何らかの悪影響を及ぼしていたということだ。エンジンブローしたアロンソの使用履歴を確認すると、そのエンジンは開幕戦のオーストラリアGP、2戦目の中国GP、そして3戦目のバーレーンGPで使われていたことがわかった。つまり、これは1基目のICE(エンジン)だった。
ただし、バーレーンGPでは予選のQ2でMGU-Hとターボにトラブルが発生したため、レースでは2基目のICEを使用。その後、4戦目のロシアGPでも2基目のICEを使用していた。
そして、5戦目のスペインGPのフリー走行で、再び1基目のICEに戻した。つまり、これはいわゆるフリー走行専用の「金曜日エンジン」だった。
さて、トラブルの原因として考えられるのは、この1基目のICEには、バーレーンGPの予選Q2でトラブルを起こしたターボとMGU-Hが搭載されていたことだ。
その後、壊れたターボとMGU-Hは解析のために分解され、2度とグランプリで使用されることはなくなったが、直接の被害を受けなかったICEはFIAによる封印を解かない範囲でメンテナンスされた後に、金曜日エンジンとしてサーキットに搬入されたわけだ。
しかし、そのエンジンが何らかの不具合を受けていた可能性があるのではないかと、長谷川祐介総責任者は示唆する。
もし、原因がそうだったとすると、ホンダの不安はまだ続く。なぜなら、スペインGPの初日にブローしたICEには搭載されていたターボ、MGU-H、MGU-Kは、時間の関係でいったんアロンソのマシンから降ろされたものの、今後も使用する可能性が残っているからだ。
「昔だったら、トラブルがあったパーツを使うということはしませんでしたが、いまは年間使用基数が制限されているので、完全に壊れていない場合は使いまわしするしかありません。またパーツに不安があれば、以前は一回ギヤダウンしてすべてのパーツをチェックしていましたが、現在は封印されているので、それもできない。いまのレギュレーションはトラブルが一度出ると、引きずるし、結果的にお金がかかってしまう」と長谷川総責任者は語る。
ホンダの苦悩は、続く。