2017年05月13日 10:13 弁護士ドットコム
政府はこのほど、北朝鮮から弾道ミサイルが発射されて、日本に飛来する可能性がある場合、「Jアラート」(全国瞬時警報システム)を利用して、ただちに「頑丈な建物」や「地下」への避難を呼びかけるという運用方針に変更した。一方で、もし警報が発令されたら、「どう行動したらいいのかわからない」という不安の声もあがっている。
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たとえば、学校などはどうなるのか。文部科学省によると、小中学校の登下校時や体育の授業などで外にいる児童・生徒をどう避難させるなどについては、現段階で具体的な指示を出していない。現場で混乱が起きるおそれもある。
Jアラートとは、弾道ミサイル発射や大津波などの緊急情報を人工衛星と地上回線を使って、瞬時に伝達するシステムだ。政府はこれまで、発射段階では「発射情報」を発信するだけだったが、発射段階から避難を呼びかける運用に変えた。
内閣官房の国民保護ポータルサイトによると、(1)屋外にいる場合、できる限り頑丈な建物や地下に避難する(2)建物がない場合、物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る(3)屋内にいる場合、窓から離れるか、窓のない部屋に移動する――よう呼びかける。
こうした運用変更の背景には、北朝鮮によるミサイル発射から着弾まで10分程度と言われている中で、「国民にできるだけ早く避難する必要性があることを呼びかけたい」(内閣官房の担当者)という考えがある。なお、特にミサイル飛来の危険性が高まっているわけではないという。
では、万が一、Jアラートが鳴った場合、小中学校など教育現場ではどのような対応・行動をとるよう指示されているのだろうか。
文部科学省によると、Jアラートが鳴った場合について、「特別な対応を指示しているわけではない」という。文科省・防災担当者は「学校だから特別なことをするわけでなく、屋内避難など、すみやかに適切な行動をとることが重要だ」と強調する。
内閣官房は4月中旬、各都道府県の危機管理室などに対して、Jアラートに関する説明会をおこなった。この説明会を受けて、東京都では4月下旬、Jアラートが鳴った場合の対応について、都立学校や区市町村の教育委員会に対して、情報提供の文書を配布した。
東京都教育委員会はこれまで、風水害や地震・津波、火山噴火など自然災害や、事件・事故が発生した場合について、学校側が、児童・生徒の安全をどう守るかについて「学校危機管理マニュアル」をまとめている。
このマニュアルの中には、自然災害や事件・事故に関する具体的な対応方法をくわしく書かれている。一方で、Jアラートが鳴るような事態については書かれていない。
都教育委員会によると、たとえば、登下校時や、遠足・運動場での体育授業時など具体的な状況で、Jアラートが鳴った場合の対応をどうするかは、現状では想定されていないという。あくまで、避難呼びかけなどに基づいた「現場の判断による対応」となるようだ。
(弁護士ドットコムニュース)