F1シーズンを転戦していると普段見かけない人との出会いがある。そんな人に、「あなたは何しに、レースに来たのか?」を尋ねてみる特別企画……なのだが、今回はフォース・インディアの副チーム代表、ボブ・ファーンリーに接触してみた。
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ロシアGPの土曜日、フリー走行3回目が終了した後、タイヤのチェックをしている松崎淳(タイヤ&ビークルサイエンス部門シニアエンジニア)に近寄る人物がいた。フォース・インディアの副チーム代表を務めるボブ・ファーンリーだ。
副チーム代表といっても、チーム代表のビジェイ・マリヤは逮捕されているから、現場でトップとしてチームを統率しているのはこのファーンリーである。
その事実上のチームトップが、フリー走行3回目の走行を終えたタイヤを見ながら、何事か話し込んでいるというのは、ほかのチームではまず見られない光景である。いったい、ファーンリーは何をしに、松崎エンジニアの元を訪れたのだろうか?
「フリー走行3回目でエステバン(・オコン)のタイヤにちょっとした問題が起きていたんだ。それをチェックに来たんだ」
理由はわかったが、それにしても副チーム代表なのに、タイヤを見て何かわかるのだろうか?
「失礼なことを言うなあ(笑)。こう見えても、私はF1に来る前はアメリカでレースをしていたんだ。CanAmでマーチ847を走らせたこともあるんだよ!!」
副チーム代表ということで、なんとなくビジネスマン的な雰囲気を感じていたこちらの嗅覚はまったくの誤りで、本当のファーンリーはF1だけでなく、アメリカでインディカー・シリーズやCanAmでレースをしたことがあるF1界でも数少ないマルチ・フォーミュラ経験者。生粋のレースボーイなのである。
じつはファーンリーにはもうひとつあまり知られていない事実があった。それは彼とフォース・インディアとの繋がりである。これも副チーム代表ということで、どこかマリヤの不在中の「雇われマスター」的な存在なのだろうと誤解している人が少なくないと思う。
しかし、ファーンリーはF1にフォース・インディアが誕生する以前から、マリヤと仕事を共にし、それ以前にもインドでさまざまなビジネスを手がけてきた過去があるのである。
「なんで、私がそんなにインドと結びつきが深いのかって?それは私が生まれた国がインドだからだよ!!」