2台のアキュラNSX GT3を投入し、PWCピレリ・ワールドチャレンジに挑むリアルタイム・レーシング(RTR)は第3戦バージニアを迎えた。RTRはシリーズ初開催となる“スプリントX”フォーマットで行われた土曜と日曜の両レースで、ともにトラブルや不運に見舞われ、トップ10入りを逃している。
今季からPWCに初採用となったスプリントXフォーマットは、60分のレース時間を設定し、その間にピットストップ作業を行い、ドライバー交代を義務付けるというもの。
新たなレース形式に対応するため、RTRは43号車ライアン・エバーズレーのマシンにトム・ダイアーを。93号車ピーター・コックスのチームメイトにマーク・ウィルキンスを起用した。
しかし、最初のスプリントXレースでは2台ともに苦戦。93号車は32周のレースで序盤となる11周目に他車との接触からダメージを受け早々にピットへ。
43号車のエバースレーとダイアーも粘りの走りを見せたものの、首位のフェラーリ488 GT3から1周遅れとなる19位に終わった。
さらに土曜のレース終了後には、その43号車にエンジントラブルが発覚。エンジン交換を行なったため、グリッド降格のペナルティを受け、日曜のレースは27番グリッドからのスタートを強いられる厳しい展開となった。
明けた日曜のメインレースは、スタートを担当したダイアーが、前日とは打って変わって見事な走りを披露。1周どころか、コーナーごとにポジションを上げる驚異の走りを見せ、エバースレーに交代。後半も順調に順位を上げていった43号車は、27周目のチェッカー時点で11位。貴重な16ポイントを獲得した。
「コーナーごとに前を抜くのが戦略だったからね」と、27番グリッドからのストラテジーを冗談交じりに語ったダイアー。
「とにかく少しのミスも犯さずに、各コーナー、1周、ひとつのオーバーテイクに集中したよ。今日の目標はフィニッシュまでたどり着くことで、マシン開発に必要なデータを収集することだった。それは達成できたと思うし、チームのみんなも喜んでくれていると思うよ」
一方、43号車と同様にマシン自体の速さは証明しながらも、まさかのアクシデントに見舞われたのが93号車だった。
スタートドライバーのウィルキンスがトップ10をうかがう走りを見せ、コックスへと交代するべくピットへ。ウィルキンスがコクピットから脱出しようとしたそのとき、事件は起こった。
「左側の肩ベルトが僕のハンス・デバイスに引っかかってしまったんだ。それでうまく身動きが取れない状態になってしまった」とウィルキンス。
「なんとか外へ出てピーター(・コックス)がマシンの中へ入ったんだけど、今度は右の肩ベルトがねじれていて……。NSXのショルダーベルトは今日の僕らにはなんの恩恵ももたらしてくれなかったみたいだ」
これで大幅にポジションを失う事態となった93号車は、14位までの挽回に留まりレースを終えることとなった。
「誰よりも10倍以上ドライバー交代の練習をしたと思うが、ご覧の通りまだ何かが間違っているのかもしれない」と肩を落としたコックス。
「今回はNSX GT3にとって初のパーマネント・サーキットでの1戦となったが、まだまだマシン自体にも改善する余地が残されている。シーズンは長いし、引き続き開発作業を進めていく必要があるね」
今回RTRは初のスプリントXフォーマットに翻弄される週末となったが、次戦第4戦は5月20~21日のカナダ・オンタリオ戦となり、ボウマンビルにあるカナディアン・モータースポーツ・パークでも引き続きスプリントX形式が採用される。