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小松礼雄コラム:ロシアで露呈してしまったエースの弱点。スペインに向けてのアップデート

2017年05月12日 14:52  AUTOSPORT web

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F1ロシアGP決勝 ロマン・グロージャンはスタート直後のパーマーとの接触
ハースF1チームのチーフエンジニアとして今年で2年目を迎える小松礼雄氏。創設2年目の新興チームであるハースはどのようにF1を戦うのか。現場の現役エンジニアが語る、リアルF1と舞台裏──F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラムの第5回目をお届けします。

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なす術がなかったグロージャンの低迷……
2台とも入賞圏外で鬼門になったロシアGP

 前回のコラムで「ロシアGPが第一のハードルになる」と書きましたが、実際にその通りになってしまいました……。

 昨年に比べれば良かったと言えますが、予選からの路面状況の変化を見て計算するとケビン(マグヌッセン)の位置はトロロッソの後ろでしたし、ロマン(グロージャン)は苦手のソチでまったくダメでしたから、ロシアGPはやっぱり僕らにとって鬼門でしたね。

 結果的に13位に終わったケビンですが、FP1からFP3にかけてトップのフェラーリとの差は大きかったとはいえ、フォース・インディアやトロロッソに対してはほぼ予想していた位置にいました。問題は、Q1のパフォーマンスです。

 ケビンは15位でギリギリ通過しましたが、Q1の2回目のアタックでは1回目のタイムを更新することができず、16位の(ジョリオン)パーマーとはわずか0.054秒差しかありませんでした。Q1からQ2にかけての伸びしろは、0.391秒上げているので合格点を挙げられるのですが、いかんせんQ1のタイムが悪すぎます。ここが現在の彼の一番の課題だと言えます。

 レースに関しては好スタートを切り、トロロッソの1台と(エステバン)オコンを抜いたところまでは良かったと思います。ただし、ターン2のブレーキングが甘すぎました。ケビンは確実に1車身以上前にいたのにも関わらず、オコンにブレーキングで抜き返されてしまいましたから。

 さらに、ターン2でワイドに膨らんでしまい、指定の場所を通ってコースに戻らなかったため、5秒ペナルティを科されました。無線でそのことを本人に伝えると、「フェアじゃない」と怒っていましたが、それはルールで決められていることなので議論の余地はないのです。レース後には本人もそれを受け入れて謝っていました。

 レース序盤は10番手を走っていたケビンですが、ピットインの際に5秒ペナルティを消化した結果、(カルロス)サインツJr.と(ダニール)クビアトに先行されてしまい、さらにトップグループが迫ってきたため、ブルーフラッグで抜かれるたびに2秒くらいタイムロスしていました。

 それが尾を引き、(ランス)ストロールがピットストップを26周目まで延ばした結果、彼にも抜かれてしまい、13番手にポジションダウン。1ストップレースなので、その後は何もできずに13位に終わりました。ペナルティさえなければ、10位は守れたと思うので残念な結果でしたね。

 一方、チームメイトのロマンは、週末を通してなす術がありませんでした。Q1ではターン13でイエローフラッグに引っかかってしまったのですが、あの時点でケビンから0.4~0.5秒遅れていたので、結果的に17位が精一杯だったと思います。

 彼は低グリップの路面への対応が得意ではないんです。ソチ初開催の2014年のFP1では、もっとグリップが低いアイスみたいな路面状況だったのですが、他のドライバーが8周目くらいでタイムを出しているのに、彼はグリップがない状態ですぐに一発のタイムを出そうとしてミスを犯してなかなかリズムに乗れませんでした。

 その結果、次の周回で走りながらタイヤの温度を適切に管理してアタックに備えることになりますが、極端に言えばブランケットを使用していないフォーミュラカーと同じような走行状態になるわけですが。ロマンのドライビングスタイルとは、相容れないものでなかなか難しいです。

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■エースのグロージャンの走りの特性
■序盤を終えての新規定F1での面白さ
■スペインGPでのアップグレードと展望