今回はクイックチャージャーにくっついている「ヘンなもの」を紹介する。クイックチャージャーは、レース中の燃料補給の際に用いる給油器具で、さまざまな形式のものがあるが、スーパーGTでは2本のホースが並列につながる形式のものが使われる。
市販乗用車の場合、燃料タンクの給油口はねじ式キャップで開閉するが、クイックチャージャーの場合、クイックチャージャーを押し込むとクイックチャージャー側のバルブが開くと同時に燃料タンク側のリッド=フタを押し開く。
すると燃料は2本のホースの片方からガソリンタンクに一気に流れ込み、ガソリンと入れ替わりに押し出された空気がもう一方のホースから抜けていく。給油器を引き抜けばバネでバルブもリッドも閉じる仕組みになっている。
ここまではクイックチャージャーの基本だ。現在スーパーGTの現場ではチームごとにさまざな工夫を加えて制作したクイックチャージャーが用いられている。それらをよく見てみると、中央になにやらロッドが突き出しているものがある。このロッドは、クイックチャージャーをリッドに押し込んだときボディに当たって給油が始まったことを検知するセンサーである。
センサーは、中央のディスプレイにつながっている。ではディスプレイに何が表示されるかというと、給油にかかっている時間である。
ピットの給油リグからは自然落下式でガソリンが流れ出す。サーキットの条件によって流入速度は若干変動するが、25mm径のリストリクターを通過した場合、1秒に約2.3リットルとなる。ここから換算すれば、給油量に必要な時間が算出できる。エンジニアは作戦に応じて給油時間を算出しておく。
給油担当クルーが給油器を差し込むとタイマーが作動し、給油時間がディスプレイに表示されるので、クルーは算出しておいた給油時間になったらクイックチャージャーを引き抜けばいい。給油時間をあらかじめタイマーに入力して、カウントダウンすることもできる。タイマーは、給油時間をできるだけ短縮しながら、作戦に幅を持たせるための工夫である。
GT500クラスのチームはほとんどがクイックチャージャーにこのタイマーを取り付けているが、取り付けていないチームもある。その場合は、給油担当クルー以外のクルーがストップウォッチで給油時間を計測し、無線を使ってカウントダウンを行ってクイックチャージャーを引き抜くタイミングを指示するという。