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「偽シャネル」販売目的の所持容疑で逮捕…自分で使うだけなら問題ない?

2017年05月12日 10:34  弁護士ドットコム

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高級ブランド「シャネル」の偽物商品を販売目的で所持したとして4月19日、三重県の女性(44)が商標法違反の疑いで逮捕された。


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報道によると、容疑者は通販サイトを通じて、偽のピアスやネックレスなどを1点1000円ほどで販売していたと見られる。偽物だという認識はあったようで、「パロディ商品として売ってもいいと思っていた」と話しているそうだ。自宅からは約600点の偽グッズが押収されている。


販売目的というのは、どういう基準で判断されるものなのだろうか。偽のブランド品(海賊版)だと知っていても、持っているだけなら問題ないのだろうか。大森景一弁護士に聞いた。


●販売や所持は商標法違反となりうる

――偽ブランド品を売ったら、どんな罪になる?


商標法78条は、「商標権又は専用使用権を侵害した者‥‥は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と規定しており、偽ブランド品などを販売目的で所持すると処罰の対象となりえます。本物と偽って販売した場合には、商標法違反に加えて、詐欺罪も成立する可能性があります。


本物と偽った場合だけでなく、偽物やパロディ商品としてであっても、他人の商標と類似し、または混同のおそれがあれば、商標権の侵害として処罰される可能性があります。


――販売するつもりはなく、偽ブランド品を持っていただけの場合は?


自己使用目的の所持は商標法違反とはなりませんので、単に偽ブランド品などを購入し、所持していたというだけでは犯罪になりません。所持していた数量、入手の経緯、販売実績などの諸事情を総合して判断されることになります。


ただし、偽ブランド品などを海外から日本に持ち帰った場合や、海外通販で購入した場合などには、商標法違反だけでなく、関税法違反も問題となりえます。


●犯罪とならない場合でも、没収の可能性

――輸入の場合、具体的にどんな問題になる?


関税法は、「商標権を侵害する物品」を輸入してはならないとしており(関税法69条の11第1項9号)、その違反に対して10年以下の懲役・1000万円以下の罰金の刑事罰を定めています(関税法第109条2項)。


ただし、関税法違反についても運用上、自己使用目的の場合には処罰されることはないと思われます。条文上は必ずしも明らかではないのですが、関税法基本通達が知的財産の侵害とならないものの例として「業として輸入されるものでないもの」を挙げているためです。


ですが、偽物の場合、国内に持ち込む際に税関で発覚すれば、没収・廃棄などが命じられる可能性があります(関税法69条の11第2項)。


――偽物と知らず輸入したり、販売したりしたらどうなる?


偽物と知らなかった場合には、商標法・関税法のいずれについても犯罪は成立しません。販売目的で所持していたり、実際に販売したり、輸入したりしたとしても、処罰されることはありません。ただし、この場合も没収・廃棄などが命じられる可能性があります。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
大森 景一(おおもり・けいいち)弁護士
平成17年弁護士登録。大阪弁護士会所属。同会刑事弁護委員会委員など。
多数の刑事事件を取り扱っているほか、内部通報制度の構築・運用などのコンプライアンス分野にも力を入れている。著書に『刑事弁護Beginners』(共著)・『逐条解説公益通報者保護法』(共著)など。
事務所名:安永一郎法律事務所
事務所URL:https://omori-law.com/