トップへ

木村拓哉は今もジャニーズの花形俳優だーー『無限の住人』“埋もれない演技”の凄み

2017年05月12日 06:04  リアルサウンド

リアルサウンド

『無限の住人』(c)沙村広明/講談社 (c)2017映画「無限の住人」製作委員会

 2017年4月29日、木村拓哉11年ぶりの主演時代劇映画『無限の住人』が公開された。三池崇史監督とのタッグとあって大きな話題になり、第70回カンヌ国際映画祭のアウト オブ コンペティション部門にも公式選出されている。木村にとって邦画・主演作品での公式選出はこれが初。また、北米、オーストラリア、ドイツでの公開も決定し、木村は海外に羽ばたくチャンスを掴みつつある。


参考:木村拓哉は木村拓哉をやめるわけにはいかないーー役者として無限の可能性を示した『無限の住人』


 そんな木村は過去に例を見ないほど高い知名度を誇るアイドルでもあり、ジャニーズを代表する俳優でもある。これまで数々の作品に出演し、ジャニーズが俳優として活躍する礎を築いてきた存在だ。過去出演した作品は軒並み高視聴率をマークし、90年代には“キムタクフィーバー”なるものまで発生した。しかし時代が移り変わり、徐々に「キムタクはどんな役を演じてもキムタク」という評価が出てくるように。しかし、依然として木村は『無限の住人』を始めとした映画やドラマに出演し続けている。今年1月クールでも、ドラマ『A LIFE~愛しき人~』(TBS系)で主演を務めたことは記憶に新しい。こうして有名作品に出演し、常に主演を張り続ける木村は“ジャニーズの花形俳優”であることに間違いない。


 木村が俳優として評価され続ける理由のひとつは、“埋もれない演技の型”にある。「どんな役を演じてもキムタク」という評価があるが、それは彼なりの演技の型があるということではないだろうか。実際、『無限の住人』においても木村の演技の型は健在だ。たとえば、ため息をつくシーンひとつとっても“木村拓哉”なのである。ため息の前に言葉ではなく表情で“クソッ!”という表現をしてから、軽い舌打ちと共に息を吐く。これは、『ラブジェネレーション』(フジテレビ系)や『HERO』(フジテレビ系)などでも見られる木村ならではの演技だ。ほかにも逸刀流を探し求める道中にずずずっと勢い良く酒を煽る仕草、八百比丘尼に対して「一思いに殺せ」と吐き捨てる様子、全てにおいて木村流の演技をしている様子がうかがえる。


 さらにその型は、どんな名優に囲まれても埋もれない。『無限の住人』の出演者を見ると、福士蒼汰、市原隼人、戸田恵梨香、市川海老蔵など、実に豪華な面々が揃っている。直近で出演した連ドラ『A LIFE~愛しき人~』(TBS系)も然りだ。主役級の俳優陣の中に混ざっても木村は霞むことなく木村流の演技をし続ける。個性が強い役者が集まると相乗効果で良い演技が生まれる一方、一人ひとりの色が薄まってしまう傾向がある。しかし、木村の場合はいかなる場合でも“木村拓哉”としての演技が薄れることはない。だからこそ、「どんな役を演じてもキムタク」という評価につながっているのではないだろうか。しかしこれは、マイナスの意味だけでなく、むしろ役者としてプラス評価なのだ。


 そして、そんな木村の演技は、業界の大御所たちから高い評価を得ている。たとえば、映画『武士の一分』の山田洋次監督。制作発表記者会見のインタビューで、「10数年前に何かのパーティで初めて見たときから、彼(木村)を起用して映画を撮りたいと思っていました。まるで、そこに1人の若い侍が立っているようだった」「木村君には求道者のような雰囲気が漂っているんですが、そこがまさに高倉健さんと似ているところ。ストイックなまでに自分を厳しく見つめる目がとても魅力的で、そういうキャラクターを本作で描き出せたら」(引用:山田洋次監督&木村拓哉主演「武士の一分」製作発表/映画.com)と語っている。


 ほかにも、演出家の蜷川幸雄氏は「桃井かおりさんとか、ああいう上手い、うるさい大人たちのなかでもまれて、キラキラして、みんなに愛されていたし。ああ、こいつは良くなるなと思っていました」、俳優・堤真一は「男が見ているだけで魅了されるっていうのは、まず僕は無いんですけど、ホントに見とれてしまいましたね」、脚本家・三谷幸喜は「もともと、お芝居が上手な方ですからね。僕は本当に、あの世代の役者さんの中では群を抜いて才能のある方だなと思っていたので…」(引用:SmaSTATION-6)など、数々の著名人たちから評価されているのだ。


 唯一無二の演技力を持ち、それを評価してくれる環境に身を置く木村は、これからも演技の道を極めていくに違いない。“キムタクフィーバー”から既に20年以上経った今でも、木村拓哉は素晴らしい役者であり続けている。ちなみに『無限の住人』においては、木村の演技もさることならが、舞のような美しい殺陣にも注目だ。(文=高橋梓)