2017年05月11日 17:54 弁護士ドットコム
英国に本社がある製薬大手アストラゼネカの日本支社につとめる男性従業員3人が5月11日、一方的に降格・減給されたうえ、それまでの職務経験・能力を生かすことができない職種に配置転換されたのは無効だとして、同社を相手に地位確認などを求める労働審判を東京地裁に申し立てた。
【関連記事:47歳男性。妻と「10年間セックスレス」で気が狂いそう――望めば「離婚」できる?】
3人はいずれも、MR職(医薬情報担当者)として20年以上同社につとめているベテラン従業員。申立書によると、3人は、降格・減給の基準や内容を定めた就業規則がないにもかからず、一方的に降格・減給されたうえ、今年1月から単純な資材管理の仕事しか与えられない職種に配転されたと訴えている。
3人の代理人をつとめる梅田和尊弁護士によると、アストラゼネカ社は2016年、キャリア制度を変更した。3人は新キャリア制度にもとづいて、降格されたり、PIP(業績改善プログラム)の対象となり、昨年秋ごろから、あいまいな理由で退職勧奨を何度も受けるようになっていたという。
労働審判を申し立てた1人、山梨理さんは30年以上一貫してMR職として勤務。仙台市で妻子と暮らしていたが、今年1月から青森県の資材担当として単身赴任した。パンフレット管理という単純な仕事内容で、1日長くて1時間、短くても30分で終わるという。専用のデスクやノートパソコン、名刺も与えられておらず、給料は手取りで3割くらい下がったそうだ。
山梨さんはこの日の申し立て後、東京・霞が関の厚労省記者クラブでの会見に出席した。山梨さんは「やる仕事がなくて、気持ちを折るための『追い出し部屋』に入れられた」「会話する相手もいないし、パンフレットをただ管理しているだけで、全然やりがいのない仕事をしている」「会社に憎しみがあるわけでなく、より良くしたいと考えている」と心境を語った。
記者会見に同席した梅田弁護士は「賃金減額は、重要な労働条件なので、大原則として、労働者の同意が必要だ。しかし、今回は同意がなく、一方的におこなわれていた。同意が不要な場合も、どういう場合に減給をするのかという基準や手続きが示されていることが必要だが、減給の手続きや内容もまったく明らかにされていない」と説明した。
さらに、配置転換について、梅田弁護士は「今までMR職でずっとやってきた人を単純作業につけるのは、業務上の必要性がない、いやがらせ目的、リストラ目的の配置転換だと考えている。能力をまったく生かせない仕事につかせる配転は、労働者が被る不利益が大きい。権利の濫用で違法だ」と述べた。
山梨さんらが加入している労働組合「東京管理職ユニオン」の鈴木剛執行委員長によると、アストラゼネカでは、不当な賃金ダウンや追い出し部屋に追いやるなど、「退職勧奨が吹き荒れている」という。
別の組合員8人が6月までに降格・減給の無効を求めて提訴する予定のほか、さらに妊娠・出産で産休を取得した女性従業員に対して、会社側が「休んでいる期間中の評価ができない」として降格にしたことがマタニティハラスメント(マタハラ)にあたるとして、女性2人が提訴を検討しているという。
(弁護士ドットコムニュース)