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阿部真央の歌には、生き様が溢れているーー2年ぶりツアー最終公演で見せた“変化”

2017年05月11日 16:03  リアルサウンド

リアルサウンド

阿部真央(写真=緒方秀美)

 阿部真央が4月23日、約2年ぶりの全国ホールツアー『阿部真央らいぶNo.7』の最終公演を東京国際フォーラム ホールAにて開催した。女性のリアルな心情を表現力豊かな歌声で歌い、多くのリスナーの共感を集めてきた阿部真央。2017年2月にはシングル曲「You changed my life」「Don’t let me down」「女たち」などを収録したフルアルバム『Babe.』をリリース。同作は自身のさまざまな人生経験を経て、表現の幅をさらに広げたアルバムとなった。その『Babe.』を掲げて行われた本公演では、表情豊かなパフォーマンスと抜群の歌唱力が発揮され、最初から最後までステージ上の彼女の姿から目を離すことができなかった。


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 歌の世界に潜り込んでいくかのような幻想的なSEとともに、バンドメンバーと阿部真央が登場。アカペラで歌いだし、切なく響いたバラード「愛みたいなもの」、怒りをロックでぶつける「逝きそうなヒーローと糠に釘男」、賑やかに罵声を浴びせる痛快な「Don’t let me down」とアルバム『Babe.』を再現するように冒頭から立て続けに3曲が披露された。その後の「ふりぃ」では、待ってましたと言わんばかりの歓声と大合唱。2年ぶりのホールツアー。観客たちがこの日を心から楽しみにしていたことがそのムードからも伝わってきた。


 西川進(Gt)、石井悠也(Dr)、高間有一(Ba)、和田健一郎(Gt)、阿部雅宏(Key)、山口陽子(Mani)といったバンドメンバーによる演奏も聴き応えがあり、激しいロックナンバーから繊細なバラードまで、どんなテイストの楽曲もぴたりとはまる。まさに一つのバンドのように息のあったプレイに阿部真央の歌声がいきいきと乗せられていく。


 中盤には阿部真央も観客も椅子に座り、じっくり歌声を聴かせるアコースティックコーナーが用意されていた。ここで阿部真央の表現力はますます凄みを増す。心を通わせることができない情念を歌う「わかるの」は迫力たっぷりに。「母である為に」では自身が母親になった喜びや覚悟が切々と歌われる。タイトルどおりのストレートなナンバー「側にいて」では、涙する観客の姿も多く見られた。


 彼女自身の成長は、シンガーソングライター阿部真央の変化にもつながっているようだ。アルバム『Babe.』がそうだったように、今後も歌となるテーマや対象は広がり、そこで歌われる言葉の説得力もさらに増していくことだろう。


 後半は一転して、アップテンポに畳みかけるセットリストで大いに盛り上げる。筆者の印象に残ったのは「gasp」での低音で攻める阿部真央の歌声。この日のライブでは、この曲以外にも彼女のロックの側面をしっかりと楽しむことができた。さらに「ロンリー」「伝えたいこと」「モットー。」といった代表曲が続くと、会場のテンションは一気に頂点へ。ファンにむけて感謝の思いや今後の決意を伝えると、ポジティブなメッセージがこめられた「それぞれ歩き出そう」を歌唱。阿部真央の完全復活を告げるような同曲をもって本編は終了した。


 アンコールは、タイトスカートと白シャツ姿で登場。ダンサブルな「モンロー」ではブルゾンちえみのモノマネで締めるというサプライズも。「女たち」のあとは、ユニークな「かしこみかしこみ」をアコースティックギターの弾き語りで披露。そしてラストに歌われたのが「母の唄」。母となった阿部真央が、自身の母に捧げる歌だ。溢れ出す感情のままに歌うその気迫に、さきほどまでの盛り上がりが嘘のように会場が静まり返る。同曲の強い余韻を残したまま、ライブ、そして全国ツアーの幕を閉じた。


「この2年間でいろんなことがありましたけど、悔いのない選択をできたと思います。あってもこれほどたくさんの方がライブに足を運んでくれる、こんなに幸せなことはないです。これからも素直にその時の思いを曲にしていきたい。もっといい曲を書いて、いいパフォーマンスを届けていきます」「たくさんの変化を、いい変化として受け取ってもらいたい。生き様を届けていけたらと思っています」


 阿部真央は、リスナーにさまざまな表情を見せてくれるシンガーだ。しかしその姿はどれもありのままで、生きることと歌うことが密接に結びついているように見える。阿部真央の歌には、生き様が溢れているーーこの日のライブを通して、シンガーソングライター阿部真央の真髄にふれることができた。(久蔵千恵)