この頃、時間の流れに非常に疎い。現在住んでいる小さな部屋も、越してきて今年で10年になる。
10年なんてちょっとした小型犬の一生分に値するものだけど、振り返るとその間、ライフスタイルでの大きな変化は、せいぜいテレビを買い替えたぐらいだ。今突然2007年にタイムスリップしても、一つも困らない気がする。
先日、はてな匿名ダイアリーに「ここ10年の差が感じられない」という投稿があった。本文は「10年前に無くて、今あるもの スマホくらいか」だけ。短い投稿ながら、実際あまり変化を感じない立場であるので、頷くしかない。(文:松本ミゾレ)
2007年はiPod touchが新発売、○○王子が流行語大賞に
2007年はどんな年だっただろうか。
ユーキャン新語・流行語大賞は、「どげんかせんといかん」と「ハニカミ王子」が受賞していた。「どげんか~」は、宮崎県知事だった東国原英夫の名文句。ハニカミ王子は、プロゴルファー石川遼の愛称だ。当時はまだ高校1年生だった。
iPod touchが初めて発売されたのもこの年だ。テレビでは、クイズ番組の「ヘキサゴン」がやけに人気だった記憶がある。司会は、今は芸能界から姿を消した島田紳助だった。
投稿へ寄せられた意見を見ていくと、
「デジタルコンテンツ配信、人工知能、VR、フィンテック関連、自動運転……すげえ変わったと思うけど」
「定額サービスの世界的な普及だろ。映画、ドラマ、アニメが1000円で見放題なんてガラケー、iPodの時代からは想像も出来ないよ」
「東日本大震災前と大震災以後で大きく変わったところもある」
など、指摘されて初めて気付いたものもチラホラある。確かに時代は変化しているようだ。
可視化しにくい「質的な変化」が多かったから、変化を実感しにくい?
コメントでは「ソフト面の変化が激しく、ハード面の変化に乏しかった、と考えるべきか、加齢で感性が鈍化しまくってる、と考えるべきか」と、この10年の変化が実感できない理由の、ヒントとなりそうな指摘もあった。言われてみればそうかもしれない。
ソフト面の前進って、ハード面の進化のように変化が一見して分かるものでもないから、その分野に疎い人にとってはそもそも認知されにくい。たとえ革新的な変化だったとしても、それまでの状態を知らなかった人にとっては知った時点がスタートラインだから、凄さを感覚的に掴めないのだと思う。
僕たちの生活は、利便性という点では天井を迎えている。人工知能や自動運転、VRなどの技術も素晴らしいけれど、まだ普及しきっていないし、どこか自分の日常とは遠い出来事のようにすら感じている。この点が、投稿者や僕がここ10年の変化を実感できない一因ではないだろうか。
とはいえ、変化しまくっている部分に目を向けろと今更言われても、そう簡単にはいかない。ハードにしか目を向けない僕みたいな人間は、この先どんどん感覚が鈍ってつまらない人生を送るようになるのかもしれない。
そして時間だけが流れ、2027年を迎えるわけだ。