残業を減らそうと知恵を絞る企業や自治体は多いが、必ずしも効果が見られている訳ではない。
そんな中、神奈川県横須賀市では昨年10月、上司が部下の仕事状況を把握する「帰るまで見守る月間」を試験導入し、残業時間を2割減らしたという。実績に結びついた理由はどこにあるのだろうか。
残業開始前に「何の仕事を」「何時まで残るのか」上司との確認を徹底
横須賀市ではこれまでも、給与支払い日の定時退社やノー残業デーなどの工夫はしていた。しかし、あまりにも長く同じことを続けたせいか効果は上がらず、結局残って仕事をする人が絶えなかったという。
こうした中、吉田雄人市長から残業削減策として「見守る月間」の案が出され、人事課で実施に踏み切ったという。結果、10月の残業時間は前年の同じ時期と比べて約2割減少した。
人事課の担当者は取り組みの具体的な内容をこう語る。
「時間外業務は本来、上司の命令に基づいて行うものですが、忙しいときには命令や事前申請を待たずに、通常業務からなし崩し的に残業することもあります。10月はこれを止め、残業前に必ず口頭で、『何の仕事がどういう状況にあり、今日は何時まで、どういう状況になるまで取り組むのか』を、部下と上司が確認することにしました」
システムの入力によって行われていた残業時間の申請をあえてアナログ化することで、上司は、部下の仕事の全体像や進捗状況、ゴールに向けて今完成させておくべき部分などを把握することができ、場合によっては残業せずに明日に持ち越す、という指示も可能になったという。
その日急いでやる必要のない仕事を見つけ出したり、残業する場合には時間的・質的締め切りを設け、無駄な残業を抑えた、という訳だ。
「管理職に過度な負担がかかるのでは?」という指摘も
一方で課題もある。現状の制度では、見守る側の管理職は1人でも部下が残っていれば職場にいなければならないため、見守りを始める前より残業時間が長くなるケースも出てきてしまう。
「運用した結果、『部下とコミュニケーションが取りやすくなった』という好意的な反応もありましたが、『管理職に過度な負担がかかるのでは?』という指摘もあり、賛否両論です」
今後は強制的な残業削減策ではなく、自主的に残業時間を減らしていけるような取り組みを検討しているという。市の担当者は
「昨年秋頃は、電通の過労死問題などもあって、世間の意識が長時間労働是正に向いていました。そのため、『見守る月間』の取り組みだけが残業時間削減に効いたとは思えません。ただ少なくとも、職員への意識付けにはなったと考えています。今後も定期的に、他の削減策を実施していきたいと考えています」
と展望を語った。