TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Raceの第2戦が5月7日にオートポリスで行われ、プロフェッショナルシリーズでは青木孝行(ケーエムエスフェニックス86)が、そしてクラブマンシリーズでは菱井將文(CUSCO BS 86)が、それぞれ優勝を飾っている。
86/BRZ Raceの第2戦は、オートポリスが舞台。昨年は熊本地震の影響でレースが中止となったため、2年ぶりの開催となった。その間の進化は、マシンはもちろん、あらゆる面で著しく、またコンディションにも恵まれたこともあって、プロフェッショナルシリーズだけでなく、クラブマンシリーズでもレコードラッシュに。それぞれ20位、18位まで、実に2秒以上も短縮された。
そして、新たなレコードホルダーとして名乗り上げたのが、青木孝行と小野田貴俊(ネッツ東埼玉ワコーズED86)。土曜日の専有走行は、クラブマンシリーズが濃霧の後のうっすら濡れた路面だったため参考程度に留まったが、プロフェッショナルシリーズはほぼドライコンディションで、2分12秒台がトップだっただけに、2分11秒637を記した青木も「全然こんなタイムが出るとは思わなかった。12秒台にはいればいいなぁ、と思っていたぐらいだから、自分でもびっくりした」と語ったほどだ。
しかし、決勝レースが行われる頃、すなわち太陽が真上に登った頃なのだが、温度は急上昇。まったく異なるコンディションに変わっていた。ただでさえ、絶えずステアリングを切り続けてタイヤを痛めるオートポリスだけに、タイヤマネージメントが勝敗のカギを大きく握ることになった。
そんななか、プロフェッショナルシリーズではポールシッターの青木が好スタートを切って、1コーナーへのホールショットを決めるも、小河諒(神奈川トヨタ☆DTEC 86)と佐々木雅弘(小倉クラッチREVO 86 BS)、蒲生尚弥(トヨタネッツ兵庫BS 86B)、そして近藤翼(神奈川トヨタ☆DTEC 86R)が少しも遅れることなく続いていく。
そんな状況のなか、まず動いたのは佐々木で3周目のターン3で小河に迫るも、ここでは逆転を許されず。しかし、ターン5では蒲生が動いていくが、小河と接触してしまい、両者ともにダメージを負ったことからピットでのリタイアを余儀なくされる。
このアクシデントによって、トップを争うのは青木と佐々木のみになり、3番手に浮上した近藤は単独走行に。代わって激しくなったのが4番手争いで、井口卓人(CG ROBOT BRZ BS)と山田英二(CUSCO BS 86)、吉田広樹(OTG TN滋賀 86)が縦一列で連なっていく。
■青木孝行「しびれるレースだった」
それぞれのバトルは、決してオーバーテイクポイントが多いとは言えないオートポリスの名物にもなりつつある連結状態になっていき、緊張感を漂わせつつ、順位はなかなか動かず。結局、最後まで青木は佐々木を抑えて、そして井口も後続2台を封じ込めた。
「(佐々木には)いっぱい貸しがあるから、利子分だけでも返してもらった感じ。でも、すごくクリーンなバトルをしてくれた。みんな、最後はタイヤがタレちゃって僕もそうだったけど、最小限にはできたと思う。あとは抜かれそうなところはしっかり抑えて。なんでか、最終コーナーが僕は速かったから、1コーナーで抜かれずに済んだのは大きかったね。それにしても、しびれるレースでしたよ!」と青木。
そして、佐々木は「青木さんに完全に合わされてしまいました。若いドライバーなら逃げようとしてタイヤを使い切っちゃったり、ミスして隙を見せたりするものだけど、さすが経験豊富なドライバー!」と、完全に脱帽の様子だった。なお、青木の勝利は2014年の第6戦富士以来3年ぶり。
一方、クラブマンシリーズでもトップ争いが、中盤まで小野田、神谷裕幸(N中部ミッドレス スノコ86)、菱井のトレイン状態に。こちらもこう着状態がしばらく続いていたものの、7周目に菱井が小野田を抜きにいって失敗、その間に小野田がリードを広げることに。
安全圏に持ち込んだかと思われたのも束の間、タイヤの違いがそのままライフの違いにも、その頃すでに表れていた。8周目に神谷を抜いたばかりの菱井が、次の周のジェットコースターストレートから続く右回りのターン11で、小野田をもかわしてトップに浮上。同じ場所で神谷も小野田に迫ったものの、同じタイヤということでここは逆転を許されなかった。そして、最後は小野田に1秒の差をつけ、菱井が逃げ切りに成功。
「去年は北海道で勝って、今年は九州でも勝ったから、徐々に本州で間を詰めていきます。みんな、誕生日プレゼントをありがとう!(5日で57歳に)確かに後半勝負とは考えていたけど、こんなにうまくいくとはね。前後のタレ具合がちょうどバランス良くて、セットアップのおかげです」と菱井。逆に「本当に最後は厳しかった。同じタイヤなら、どう来るか分かるけど……」と小野田は2連勝ならず、神谷とともにガックリ肩を落としていた。