2017年05月08日 10:14 弁護士ドットコム
営業先の客から、「家族旅行費にお使いください」と数万円入った封筒を受け取った人が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに「もらうことはできますか?」と質問を寄せました。相談者は営業職で、その客とはプライベートの話もする仲で、「祖父母を連れて家族旅行に行く話」をしたところ、現金を渡されたそうです。
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1度は受け取れないと伝えたものの、結局はもらってしまいました。しかし、勤務先に報告したところ、「もしサービス面で問題があった時にトラブルが起きる可能性もある」とのことで、「お客さまに商品等を購入してもらう際に、プレゼントをして返す」ように言われたそうです。
ただ、相談者は納得していないようで、本当に「家族旅行に利用する事はできないのでしょうか? 収入として確定申告も必要なのでしょうか」と聞いています。この質問について、上将倫弁護士に聞きました。
「営業先からプライベートで金銭を受領したからといって、直ちに何か法に触れることはありません。就業規則などで、個人的に金銭を受領することが禁じられていない場合には、個人的にこれを受領することも不可能ではありません。この場合は、贈与を受けたものと解されますので、年間110万円までなら申告は不要でしょう。
もっとも、勤務先から誤解を受けやすい紛らわしい問題があり、相談者にとってリスクとなる場合がありますので、注意が必要です」
どのような問題に発展する可能性があるのか。
「まず、今回は『家族旅行に使って欲しい』との申し出なので、客側の意向としては、相談者個人に対する贈与になると思います。しかし、勤務先の会社からみるとそのような申し出があったというのが事実かどうか確認することが難しく、会社に対して支払われた謝礼ではないのか疑われる可能性があります。
万が一、顧客との間で何らかのトラブルになった場合に、『このような謝礼を支払った』との指摘がなされ、会社にとって負い目になることもあり得ないことではありません。また、今後、相談者がその顧客に対して割り引きや有利な行為をした場合に、勤務先からは、会社に対する忠実義務に違反する行為ではないかとみられる可能性もあります。
場合によっては、『リベートをもらって妥当な範囲を超えて、過度の割引をしているのでは』などと背任行為を疑われ、民事上の賠償だけでなく刑事事件のリスクを背負うことになってしまうおそれもあります。
このような事情から、就業規則などで取引先からの金銭等の受領を禁止している会社もあり、そのような場合は、金銭を受け取ることはできないでしょう。また、就業規則などにそのような定めがない場合でも、あらぬ誤解を受けないよう、会社の指示にしたがっておいた方が無難だと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
上 将倫(かみ・まさのり)弁護士
2001年に弁護士登録して現在16年目。家族、子どもなどのドメスティックな問題に関心を持ち、男女間トラブルや離婚、遺言・相続、児童虐待などの事件に積極的に取り組んでいる。
事務所名:弁護士法人松尾・中村・上法律事務所
事務所URL:http://www.mnk-law.jp/