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V6 岡田准一、映画界の巨匠も認めた「実力」ーー役者としての強みは“受けの芝居”にアリ!

2017年05月06日 06:03  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)2017映画「追憶」製作委員会

 監督・降旗康男×撮影・木村大作という日本映画を代表する2人がコンビを組んだ映画『追憶』。本作で主演の刑事・四方篤を演じるのが岡田准一だ。第38回日本アカデミー賞では、『永遠の0』で最優秀主演男優賞、『蜩ノ記』で最優秀助演男優賞のダブル受賞を果たすなど、日本映画界にはなくてはならない存在となったが、『追憶』では、巨匠をして「受けの芝居がいい」と言わしめた演技をみせた。


(参考:木村拓哉、森田剛、岡田准一……演出家・蜷川幸雄が磨き上げたジャニーズ俳優たち


 岡田といえば、アイドルグループV6のメンバーとして活躍する一方、ドラマや映画に積極的に参加し、多くの作品で主演を務めた。その役柄は多岐にわたり、宮藤官九郎とタッグを組んだ『木更津キャッツアイ』では、頑固で頑なな面を持ちつつも、お茶目で愛嬌があるコミカルな役で話題をさらうと、『SP』シリーズや『図書館戦争』では自身の身体能力を活かした激しいアクションで人々を魅了した。また『花よりもなほ』や『天地明察』、『蜩ノ記』などの時代劇では、凛としていつつも、しっとりとした佇まいで、色気ある青年を演じている。


 基本的には、正義感が強く、武骨な人物がはまるが、どんな役柄でも、キャラクターを立体的に演じることが上手い俳優というイメージがある。日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した『永遠の0』で演じた宮部久蔵は、一級品の操縦技術を持った航空兵だったが、なによりも命を大切にする考え方から「臆病者」と呼ばれ蔑まれることもあるという男だった。国を思う気持ち、家族を思う気持ち、仲間を思う気持ち……。さまざまな“思い”を持ちつつも、多くを語ることなく、背中で演じることは非常に難しく思われるが、岡田は見事に相手との間や、内からにじみ出る立ち振る舞いで演じ切った。


 こうした特徴は『追憶』でも表れている。岡田演じる四方篤は富山県警の刑事だが、ある殺人事件の容疑者が自分の幼なじみだと分かると、幼少期に関わったある重大な秘密と向き合わざるを得ない状況になってしまう。刑事としての正義感を持ちつつ、自身の過去に後ろめたさを感じ、強い葛藤を抱く男……。そのやり場のない憤りをくすぶらせながら前に進んでいく姿を、たっぷりとした間でみせてくれる。


 かなり余白のあるシーンが多いが、これは岡田が、その余白に耐えうるということだろう。木村カメラマンは岡田に対して「受けの芝居が良い」と評価している。さらに「受けの芝居をずっと撮っていて無駄にならないという俳優はそうはいない、しかも30代で」と唯一無二の存在であることを強調する。また降旗監督も「ただセリフをなぞるのではなく、そのセリフをいう人物になれるかが重要」と語っており、その部分での俳優・岡田准一を非常に高く評価している。


 事件の容疑者である小栗旬演じる田所啓太との対峙も見どころいっぱいだ。木村カメラマンは小栗について「攻めの芝居がいい」と話していたが、劇中で二人が向き合うシーンでみせる岡田の“陰”の表情は存在感抜群だ。


 本作の完成披露会見で、降旗監督、木村カメラマンともに岡田について「高倉健さんの雰囲気を感じる」と話していた。背中を見ているだけで、その人物が背負っているものを感じることができる俳優。岡田自身も高倉に対して「比べるのも恐縮してしまうほど、特別な存在」と語っているように、佇まいだけで、演じる人物のすべてを表現できるような俳優というのが理想なのだろう。


 岡田ばかりではなく、小栗、柄本祐、安藤サクラなど若手実力派俳優たちの深みある演技が堪能できる映画『追憶』。贅沢な“間”に込められている登場人物たちの“人生”を感じ取ってみてほしい。


(磯部正和)