厚生労働省によると、3月の有効求人倍率は1.45倍で、前の月より0.02ポイント上昇。平成2年11月に1.45倍を記録して以来、26年4か月ぶりの高水準となっている。
そのように売り手市場のためだろうか、「暇な職場(事務)の見つけ方を教えて下さい」という質問が、先日発言小町に上がっていた。トピックを立てたのは接客業で20代半ばの女性。仕事が忙しすぎるので、暇な事務職に転職したいという。(文:okei)
「収入は高望みしません、正社員でボーナス込み300万円でいいです」
トピ主は昼休憩もとれないほど忙しく、休みの日には出かける気力もないほどぐったりしている毎日なのに、手取りは15万円。周囲の友人を見ていると、終業後に習い事や休日に旅行などを楽しんでおり、心底羨ましく思っている。
「業務に向上心などは求めません。朝の30分で仕事が片付いてしまうような会社でもいいです。というかそのぐらいの会社がいいです。『出勤してくれさえしたらいい』なんて思ってるような、そんな会社に運良く入り込みたいです」
と訴え、そういう求人の見つけ方、見分けるポイントなどを質問。さらに派遣ではなく正社員を希望し「収入は高望みしません。ボーナスなどを入れて年300でいいです」と、経験者のアドバイスを求めていた。
ブラック企業に苦しむ人も多い中、なかなか贅沢な要望だ。これには当然、「そんな仕事今どきあるわけない」と非難が殺到した。
「出勤するだけで年収300万円とか図々しいにも程がありますよ」
「事務一筋の私としては、事務をなめられたようで不快」
などのほか、暇な職場はあっても、パートや派遣社員、または他の社員にその30分ぶんの仕事を割り振るものだという、怒りを含んだ説教が圧倒多数。まず未経験ではムリ、簿記一級など資格を取得しなさいという指摘も多かった。
意外といる「うちの職場がそうです」という人たち
ところが、トピ主は多くの批判にもめげず、
「私はこの人生を生き切るのに、綺麗事などはいらないと思っています」
と反論している。「そんな職場はない」という人たちは、本当に世間を知ったつもりで知らないだけでは?そういう人は自ら選んだ道を「必死こいてもがきながら頑張っていれば良いのです」と断言、私は嫌なんですと強気の持論を展開していた。ある意味たいへん前向きで感心するが、現実はどうだろう。
実は、書き込みの中には「あります」「うちの職場がそうです」と書く人たちも多くいた。国家資格を持っていて、まさに「居るだけでいい」という職場や、前職の経歴を買われて、もしくは大手企業で派遣から正社員へというパターン、優秀過ぎて業務があっという間に終わってしまう人まで。
基本的に能力が高い、もしくは「大卒の新卒で大手企業に入った」という人たちだ。「コネ」「運」という人もいたので可能性はゼロではないが、やはり狭き門であることを思い知らされる。
もはや事務職は不要になる? 人間の10倍のスピードで仕事をこなすAI
ところで、人間の代わりに機械が事務作業を行う仕組みをRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼び、人手不足の解消策として注目されている。4月24日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でも、「ロボット社員」として日本生命などの大手企業が導入している様子を伝えていた。
通称「日生(にっせい)ロボ美ちゃん」なるノートパソコンが、顧客データ10件の住所変更を人間の約10倍の速さでミスなく完了。同社では現在16の業務にロボット6台を活用しており、オフィスには空きデスクも目立っていた。このイスに座りたいと思う人は大勢いるはずだが、登場した担当者は
「ロボ美ちゃんがいなかったら、もっと多くの人が必要だった」
とロボ社員を讃える。
それはそうだろう。労務管理不要で休まず働き続ける優秀な社員だ。企業もトピ主と同じように、「生き切るのに綺麗ごとなど要らない」と考えてもおかしくない。「暇な事務職」への道は険しくなるばかりである。