2017年05月05日 10:43 弁護士ドットコム
「泥ママって本当にいるの?」。ネットの掲示板「ガールズちゃんねる」で、そんなスレッドがたち、話題になりました。スレッドをたてた人は、「今のところ私は経験しておりません」として、「泥ママ(泥棒するママ)」の存在には懐疑的なのですが、気になっているそうです。
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レスには「泥棒する人なんているんだ!」という驚きも多かったものの、様々なママ友トラブルに関する投稿が並んでいました。「『あの人が来ると家の中のものがなくなる』という人はいる。被害にあったのは、傘、食器、本など」、「CD借りパクされた。何度返してって言っても『今度ね~』で幼稚園卒園してしまった」、「アニメのDVDをまとめて貸したら返してくれない。損失としては一万弱ですんだけど」。
このようなトラブルは、ママ友間だけでなく、職場や知人などとも発生し得るものです。親しい関係であるほど、なかなか声をあげづらい問題ですが、どのような罪に問われるのでしょうか。中西 祐一弁護士に聞きました。
「他人の家から無断でその家の物を持ち去った場合は、『窃盗罪』に該当します。友人同士でのトラブルとのことですので、まずは『あなたのやっていることは窃盗罪に該当し得るものだから、きちんと返却して欲しい』と伝えてみたらどうでしょうか。
それでも、なお応じない場合、窃盗の被害に遭ったとして、損害賠償を請求することになります。その際には、被害者側が被害の事実を立証しなければなりません。具体的には、次の2点を立証する必要があります。
(1)盗まれた物が元々家の中にあったこと(2)盗んだのが自宅に招いた友人であること
現実には、ご質問にあるような傘や食器・本のような動産の場合は、(1)の「これらの品物が元々家にあったこと」を立証することが非常に難しいと思われます。このようなトラブルを防ぐためには、知人を招く際であっても、貴重品を目に付くところに置かない、客を他の部屋に自由に出入りさせないなどの配慮が必要なのかもしれません」
借りたものを返さない「借りパク」トラブルも罪になるのか。
「借りた物を返さなかった場合には、2つの可能性があります。
まず、元々返すつもりがないのに、『返すから貸してほしい』言って借りた場合は、他人の物を騙し取ったこととなり、『詐欺罪』に該当します。
また、当初は返すつもりで借りたのに、催促しても返したもらえなかったという場合には、他人から預かっている物を自分の物にしたとして、『横領罪』が成立する可能性があります」
こうした場合でも、「立証」は被害者がおこなう必要があるという。
「立証する上で、最初に問題となるのは、『本当にそのCDやDVDを貸したことがあるのか』という点です。契約書などがあれば一番よいのですが、友人同士のCDの貸し借りで契約書を作ることはまずありません。
例えば、メールやLINEなどで『この前貸した○○のCD、そろそろ返してよ』と催促し、これに対して『ごめん。すぐ返すね』などという返信があれば、メールの内容が貸した証拠になると思われます。
詐欺の場合は、これに加えて、『元々返すつもりがなかった』ことを立証する必要がありますが、これは通常、かなり難しいと思われます。
横領の場合は、少なくとも、『何度も催促したのに返してくれなかった』という事実を立証する必要があると思われます。やはり、メールやLINEなどで催促をすると、証拠が残って良いのではないかと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
中西 祐一(なかにし・ゆういち)弁護士
金沢弁護士会所属。地元の方々の身近なトラブルの解決を目指し、民事・刑事を問わず幅広い分野の案件を取り扱っているが、その中でも、刑事事件には特に力を入れており、裁判員裁判や冤罪事件の国家賠償請求事件などにも積極的に関わっている。
事務所名:中西祐一法律事務所
事務所URL:http://www.nakanishi-law.net