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今宮純によるF1ロシアGP採点:過小評価を覆したボッタスのハングリー精神

2017年05月04日 13:42  AUTOSPORT web

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F1第4戦ロシアGPで初優勝を遂げたバルテリ・ボッタス
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。 

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☆1 ダニール・クビアト
 2025年まで開催契約延長が決定されたF1ロシアGP。副首相や今年冠スポンサーになった「VTB銀行」首脳がぞろぞろグリッドに現れ、応対に努めたクビアト。
 
 予選13位、決勝12位は目立つものではなくてもこの国には彼が必要だ。終盤50周目に自己ベストラップ5位、クリーンエアでルイス・ハミルトンより好タイムをマーク。

☆1 ストフェル・バンドーン
 マクラーレン・ホンダまた1台きり。15グリッドダウンの彼がなんとか初戦13位に次ぐ14位完走。

 決勝中のセクター1タイムはセバスチャン・ベッテルの1.512秒落ち、この数字が冷徹に現状を示している。ドライバー感覚だと「2秒落ち、15キロ遅い(!)」と言うのも当然、彼も内心INDYに行きたいのでは。


☆2 ニコ・ヒュルケンベルグ
 奇抜なストラテジー、ウルトラソフトで40周をカバー。悩みのレースペースを実戦で確認テストするのが目的、結果8位でもルノー・チームはいろいろトライ。彼もそれを受け入れている。

☆2 セルジオ・ペレス
 何度もここで取り上げているように連続完走、入賞記録を更新中。今季7・9・7・6位。あえて欲を言うなら予選アタック、いまのペレスならば3列目に並べばもっと戦えるはず。

☆2 フェリペ・マッサ
 まったく初めてのランス・ストロールを引き連れ、まるでシェルパ(道案内人)のようにフリー走行で先導。

 マッサはややライン・ワークが他と違い、それをコース上で実地コーチング。自分は予選6位進出、リヤを“押し出し気味”にコントロールする走法も今年のピレリなら可能。

 レース中に不可解なスロー・パンク2回が起き9位、最終盤で周回遅れになる際のトリッキーな動きは、ベテランの裏技か?


☆3 エステバン・オコン
 公式には残らないQ1の6位に驚かされた。初めてペレスに大差、だがQ3ではそのQ1タイムを上げられず10位。

 自己ベスト・グリッドから自己ベスト・リザルト7位入賞。レースごとにタイヤ・ケアが進歩、開幕からダブル入賞100%でチーム合計31点。早くも昨年のほぼ4倍だ。

☆3 マックス・フェルスタッペン
 ボッタスだけでなく彼もスタートを決め、マッサとダニエル・リカルドをかわしている。抜群のダッシュ成功率。

 すくい取った5位を堅持、ドライバーズ・ランキングでもライコネンに14点差の5位。リカルドを13点リードし次のF1スペインGPからレッドブル2年目が始まる。

☆3 カルロス・サインツJr.
 3グリッドダウンの14位ながら10位入賞を勝ちとった。金曜はグリップを引き出せずにいたがセッティング変更、今年は二日目に着実に改善してくる。マシン理解度を高め頭脳派ドライバーに進化しつつある。

☆4 キミ・ライコネン
 勝利数の2倍以上、PPの約3倍も最速ラップを獲っている。今年4戦で2回目、通算45回は1位ミハエル・シューマッハーの77回に次ぐ2位、アラン・プロストの41回を超える。 

 SF70Hのポテンシャルを気に入っているのは、この最速ラップ獲得率から解る。ソチでは直角ターンのセクター3で常に最速、一定リズムを保ちスイスイっと流れるようなコーナー・ワーク。

「フロントの入りが……」とそればかりよく取沙汰されるが、その気配は感じられない。0.059秒差でPPを逃した2位は15年イタリアGP以来。

 仮説として、もし奇数列グリッド3位であったらどうなったか……、フェラーリ1-2の可能性も?


☆4 セバスチャン・ベッテル
 向かい風を受けたフェラーリ、ボッタスのスリップストリーム効果がより高まったのは確かだ。

 決して出遅れてはいなかったがスタートで攻略されると、執拗な追跡戦にスイッチオン。

 独走は許さないぞ、そのベッテルの意気地がシーズンをおもしろく、緊迫感を見る者に与える。今年のベッテルはV4達成のころよりずっと逞しい。

☆5 バルテリ・ボッタス
 明らかにニキ・ラウダ氏は彼を過小評価していた。オフのころは「(ニコ・)ロズベルグなみにはやれるだろうが……」とナンバー1.5的な見方をしていた(だから1年契約だったのかもしれない)。

 しかし、レース後に「こういう初勝利レースはすばらしい」と絶賛、メルセデス全体がボッタスを見直した。ハミルトンは気づいたはずだ。いままでの相手、フェルナンド・アロンソやジェンソン・バトン、ロズベルグと違い黙々と迫りくる年下のフィンランド人はチーム内での駆け引きに興味はなく、首脳陣に取り入るわけでもない。

 第4戦にして全セッションすべて負かされ、レースでも劣ったそのショックは小さくはない。見事な逆転勝利で、はしゃがない態度にも末恐ろしいと感じただろう。

 この1年に自分の将来がかかっている彼はレース人生を賭けている。

 長期契約の“スターさん”とは気構えが違う。それが金曜からの結果にはっきり出た。

 ラウダ氏が言うとおり、106人目GP勝者フェルスタッペンもその前のリカルドもマルドナドも、こういう鉄壁な初勝利ではなかった。

 まるで何勝もしてきたチャンピオンのような81戦目であった。