銃社会アメリカとはいえ、銃を突き付けられて動揺しないはずがないであろう。このほどミズーリ州カンザスシティのサンドイッチショップに押し入った強盗が、男性店員を銃で脅すという事件が発生した。だがその店員は、顔色一つ変えることなく冷静な対応をして世間を驚かせた。
【動画を見る】4月26日の午後9時15分頃、カンザスシティにある「Jimmy Johns(ジミー・ジョンズ)」というサンドイッチショップに、1人の男が押し入った。
男は注文時に「どんなチーズの種類があるか」と訊ねたため、この店に勤務して4年目のアシスタントマネージャーであるタッカー・マリーさん(24歳)が対応した。
すると男は着ていたトレーナーの前ポケットから突然銃を出し、タッカーさんに突き付け「レジの引き出しを開けろ」と囁いた。この時のタッカーさんは、「恐怖ではなく怒りを感じた」と後に英『BBC』など各メディアのインタビューで語っている。
その様子はカンザスシティ警察が公開した動画でも捉えられているが、タッカーさんは突き付けられた銃に表情一つ変えることなく男と対峙している。レジも開けずにタッカーさんから冷ややかな眼差しで見返された男は、イライラした様子でレジの中の金を寄越すように再度指示した。
動画では、男は銃でタッカーさんの顔を小突く仕草も見せている。どちらかというと焦っているのは強盗犯で、タッカーさんは終始落ち着いた様子だ。銃を目の前で何度もちらつかされ脅されたタッカーさんは、ようやくレジを開けゆっくりと札を取り出して渡そうとすると「小銭も寄越せ」と言われ、うんざりした表情でレジの引き出しごと男に渡した。
あまりにも落ち着き払った姿のタッカーさんの映像がSNSを通して拡散されると、アメリカだけではなく世界各地からタッカーさんへの取材の申し込みがあったという。
4月28日、スカイプで各メディアの取材に応じたタッカーさんは「男はレジの中のお金を全て欲しがりました。男が金を寄越せと言ってきた時も本当は渡したくはなかったのですが、後ろにいるマネージャーが『言われた通りに渡して』と言うのでレジを開けました。実際に銃を顔に向けられていた状況で、こんなことを言うのもバカバカしいですが、あの時は男が何かをしてくるとは思えませんでした。後になって、男が数々の強盗を働いてきたことを警察から聞いて驚きました。僕が見たところ、あの男は初犯のようなぎこちなさがありましたから」と話している。
自身も銃保持者であるタッカーさんは、この日まで強盗に遭ったことはなかったそうだ。初めて目の前で銃を突きつけ脅された状況で、全く怯むことがないというのはかなりの度胸だといえよう。当時、店内に客はおらず、タッカーさん以外の2人の従業員のうち1人は銃を見るやいなや冷蔵庫の影に隠れ、マネージャーはタッカーさんの後ろで『お金を全部渡しますから』と言いつつ怯えていたという。結局、男はレジにあった280ドル(約31,000円)全てを奪い、逃走した。
警察が早急に動画を公開したおかげで、犯人は逮捕された。運転中の犯人を発見したのは、退職した元カンザスシティ警察署長だった。車内に銃を2丁所持していた強盗犯テリー・レイフォード(54歳)は、2008年に武器使用による第一級強盗罪で逮捕されており、現在は仮釈放中の身だった。クラック・コカインの密売人に借金があったため、その返済をしようと密売人から銃を盗んで「Jimmy Johns」に押し入ったことが裁判所文書で明らかになっており、再び銃器所持と連邦法違反行為の重罪に問われている。
テリーは仮釈放中の遵守条件が厳しすぎることへの辛さを感じ、違反行為をすれば刑務所に戻れると思ったという。希望が叶い刑務所に逆戻りしたテリーには連邦刑務所で10年の懲役が科せられる可能性があるとのこと。なお保釈金は25万ドル(約2800万円)に設定された。
このニュースを知った世間の人々からは、「この店員はメダルものだな。俺なら失神しているよ」「この冷静さ、かっこ良過ぎる。デートしたい」「どうやったら銃を目の前にしてこんなに冷静でいられるんだろう」といったタッカーさんを称賛する声が多々あがっている。
出典:https://youtube.owacon.moe
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)