2017年05月02日 11:03 弁護士ドットコム
友人や知人から宗教勧誘されて、不快に感じたことがありませんか。インターネットのQ&Aサイトには、職場で同僚から宗教勧誘をされて困っているという相談が投稿されていました。
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投稿者は、従業員十数人の会社を経営しているそうです。ある従業員が、社内で宗教の勧誘を行なっていることが発覚しました。勧誘を受けたある従業員は、1年半にもわたって就業時間内にしつこく勧誘され、出勤することも苦痛に感じているといいます。他の従業員からも、仕事のあと食事に誘われて宗教勧誘を受けた、との証言が得られました。
投稿者は、宗教の勧誘によって、「円滑に業務に専念できる職場環境の維持」に支障が生じている、と悩みを打ち明けています。また、会社の顧客にまで勧誘が及ぶ可能性を危惧しているそうです。このような場合、就業規則によって、事業所外を含めた社員間の宗教勧誘を禁止したり、勧誘をした従業員を解雇したりすることはできるのでしょうか。大西敦弁護士に聞きました。
「就業規則によって、勤務時間中及び事業所内における宗教勧誘行為を禁止することは可能です。
従業員には、労働時間中は仕事に専念し、誠実に労働しなければならない職務専念義務があります。一方、会社には、建物、敷地、設備等の企業施設をその企業目的に合うよう管理・保全する施設管理権を有するとされています。
ただし、勤務時間外、かつ、事業所外における宗教勧誘行為までを禁止することはできないと思います。会社が、社員の勤務時間外、事業所外における行為を制限することは基本的にできませんし(もちろん、兼業禁止のような場合は除きます)、事業所外では会社の施設管理権も及ばないからです」
就業規則に反しているとして、処分することはできるのか。
「従業員が就業規則に反して宗教勧誘行為を行った場合でも、単に勧誘を行ったことをもって解雇まですることは難しいように思います。少なくとも、会社としては、その宗教勧誘行為を認識した場合、勧誘を行わないよう複数回指導し、譴責、減給、出勤停止といった懲戒処分を積み重ねて、解雇を行うべきです。
解雇が認められるのは、執拗な勧誘行為によって会社の業務に支障をきたすなど、その従業員の宗教勧誘行為が企業秩序を乱すような場合に限られると思います。例えば、休憩時間中に、他の社員に対し、宗教のパンフレットや書籍を渡すような平穏な態様の行為にとどまったとすれば、解雇は認められないように思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
大西 敦(おおにし・あつし)弁護士
2004年弁護士登録、東京弁護士会所属。2015年に千代田区神田神保町において、大西法律事務所を開設。労働組合の顧問弁護士を始め、労働事件を労働者側、使用者側で多数受任している。
事務所名:大西法律事務所
事務所URL:http://www.onishi-law.com/