ゴールデンウイークを目前に控えた4月26日。いつものようにパソコンを立ち上げようとしたところ、なぜか立ち上げることが出来ない状態になっていた。
「ああ~、まあ古いからしょうがないか」と、セーフモードで起動させようとしたり、復旧用のディスクを使うものの、全く効果が見られなかった。焦った。なんせ故障したパソコンには、向こう半月分の原稿が30本ほど保存されていた。
このまま起動できない場合を想像すると、居ても立ってもいられなくなった。そこで近所のパソコン修理業者に持ち込んでみたところ、「修理が必要なので数日預かりになります」とのことだった。
2日後にはとりあえず故障したパソコンの中に入っていた原稿だけ抽出してもらうことができたため、サブのパソコンで無事に管理することができるようになった。これで一安心。
その際に、業者さんが面白い話をしてくれた。(文:松本ミゾレ)
家族に内緒でアダルトサイト閲覧 → 「ウイルス感染」詐欺バナーでパニックに
アポなしで持ち込みをしたため、業者さんは一瞬だけ「うわ、またか」みたいな顔をしたのを、僕は見逃さなかった。一体どういうことなのか。
「大型連休中は、普段よりも修理の依頼が多いんですね。だからちょっとだけ対応が遅れるかもしれません」
そう言ってカレンダーを指さす業者さん。細かくスケジュールが書き込まれており、確かに忙しいようだ。そこで「ああ、普段パソコンが壊れてもなかなか修理に出す時間がない人は、連休中に持ち込むんですね」と聞いたら、どうやらそうではないらしい。
「この時期って、普段は仕事をしている人たちが家でのんびりすることも多いですけど、そうすると普段スマホで難なくこなしてることを自宅のパソコンでやろうとして、故障したと思い込む人が出るんです」
業者さんは続ける。
「連休中、こっそり家族に内緒でパソコンからアダルトサイトを閲覧してですね、変なバナーが出たり、ウイルス感染を匂わせる音声が流れたりして、故障したと思い込む人が急増するんです」
なるほど~、と思った。スマホとパソコンとでは使い勝手が違うので、普段スマホからアダルトサイトを見るおじさんたちも、つい戸惑って変なところをクリックするかもしれない。その結果おかしなポップアップが立ち上がったり、請求画面が出てきたりして焦ることもあるのだろう。
中にはパニックになってしまい「パソコンが故障したんだけど」と修理を依頼するおじさんというのも出るというのだ。
「パソコンの情報を抜き出した」という警告も無視して
僕が修理を依頼したのは昼過ぎぐらいだったんだけど、実はその日の午前中にも、この手の修理依頼があったそうだ。こういう依頼の客層は、大体40代以降の男性で、持ち込む際の言葉も「子供が勝手に~」だとか「間違えてアダルトサイトをクリックして~」とか、そういうのばかりだという。
業者さんも業者さんでこの薄ら寒い嘘に付き合わないといけないのが、毎回苦痛ということだ。しかも修理を依頼されても、ポップアップを消したり、請求画面を消すぐらいの対策しかできない。だってほとんどの場合、ウイルスにも感染している形跡もないというのだからしょうがない。持ち込まれた側も色々と気を遣うのでやりにくい。
「おかしな音声、警告メッセージ。それから請求画面なんてのも、基本的に無視していいんです。中には『パソコンの情報を抜き出した』だの言ってきて怖がらせる架空請求もあるかもしれませんが、ああいうのも無視でいいです。スパムメールと同じですね、相手にしないのが一番」
業者さんはそう言って、苦笑いしていた。変なバナーが出ても冷静に対処していきたいものだ。