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桑田佳祐、Mr.Children、宇多田ヒカル…朝ドラ主題歌に国民的アーティスト連続起用の背景

2017年05月01日 21:13  リアルサウンド

リアルサウンド

連続テレビ小説 ひよっこ Part1 (NHKドラマ・ガイド)

 有村架純主演の連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK総合)にて、桑田佳祐が歌う主題歌「若い広場」が視聴者の間で絶賛されている。


参考:中島みゆき、ユーミン、ドリカム……NHK朝ドラ主題歌の歴史とその特徴とは?


 前作『べっぴんさん』はMr.Children「ヒカリノアトリエ」、前々作『とと姉ちゃん』は宇多田ヒカル「花束を君に」が主題歌を担当。日本を代表するアーティストが連続起用されたことで、視聴者の主題歌への関心も高まっているのではないだろうか。テレビ解説者の木村隆志氏に、近年の朝ドラ主題歌の傾向を聞いた。


 大物アーティストの連続起用について、同氏は“朝ドラの視聴率向上”が要因のひとつと説明する。


「2010年に放送された『ゲゲゲの女房』以降、朝ドラの視聴率は高水準で推移しており、その人気と影響力は計り知れないものとなりました。多くの視聴者に毎朝聴いてもらえるのは、大物アーティストにとっても大変意義がありますし、視聴率が向上したことで、制作側も挑戦的なオファーができるようになったのでしょう。また、主題歌は作品の世界観を重要視して作られます。普段制作している音楽とは違った側面を見せられるのも、アーティスト側のメリットと言えます」


 2010年以降は、2012年の下期に放送された『純と愛』以外、すべての番組で平均視聴率が20%前後を記録しており、朝ドラのブランド力は復活したと言える。


 著名なアーティストが主題歌を担当する一方で、『あまちゃん』や『まれ』のようにオープニングがインストルメンタルの朝ドラも存在する。同氏は「朝ドラの主題歌には、普遍的な楽曲が求められる」と全体の傾向を指摘する。


「朝ドラは同じオープニングが半年間流れるため、それに耐えうる楽曲が求められますし、制作側も大変力を入れています。主題歌とタイトルバックは気持ちよく1日のスタートを飾れるような映像が求められる上、主人公が10代~50代へと成長していく物語に対応できるものでなければいけません。最初に与えるインパクトは少なくても、回を重ねるごとに、じわじわと味わい深さを増していく楽曲が好まれる傾向にあります。大河ドラマを見れば分かるよう長期間放送されるドラマや、長い人生を描いたドラマはインストゥルメンタルが最も向いていますが、歌詞のある楽曲の場合も普遍的な歌詞を綴った楽曲が求められます」


 『ひよっこ』では、日本の高度経済成長期を背景に、その時代を懸命に生き抜いた人たちの人生が描かれている。主題歌の「若い広場」は、桑田が「自然と自分自身の人生を今一度辿っていくような感覚とともに、夢と希望に溢れた日本の未来に思いを馳せながら、歌詞を綴りました。古き良き日本の情感のようなものも、あわせて感じていただけますと幸いです」とコメントしているように、昭和後期の歌謡曲を想起させるミディアムナンバーだ。


 同氏は、「若い広場」の歌詞について「『ひよっこ』の時代背景や当時の人の想いを象徴している」と解説する。


「劇中で直接描かれない世界観やテーマを象徴化するのも、主題歌の役割のひとつです。これまでは戦前戦後の物語が続いたため、それにあわせて主題歌もしみじみとした楽曲が続いていました。今回は高度経済成長期が時代背景にあるため、いつも以上に夢や希望が歌の中に盛り込まれています。<肩寄せ合い、声合わせて、希望に燃える、恋の歌>という歌詞の一節からは、希望に燃える当時の人々の心境や、古き良き日本の情景が伝わってきます。桑田さんも同時代を生きた方なので、希望に沸いていた当時の様子を、何倍にも膨らませて表現したのでは」


 『ひよっこ』の次は、吉本興業創業者をモデルにした朝ドラ『わろてんか』の放送が控えている。先日、葵わかながヒロインを務めることが発表されたが、これから発表される主題歌の行方にも注目が集まりそうだ。(泉夏音)