都立高校の6割で「地毛証明書」を提出させていたという報道を受け、ネットでは「前時代的」「まだやってたのか」など、批判的な声が相次いでいる。
地毛証明書は、髪の色や質感が生まれ持ったものであることを証明するもの。4月30日の朝日新聞の報道によると、黒髪でない、またはストレートでない生徒に対し教員が個別に声をかけて、保護者のサインや押印と共に用紙を提出するよう求めていたという。一部では証拠として幼児期の写真も提出させていた。
「国の右傾化に伴い、子どもたちに対する見方も厳しくなっている」
そもそも、なぜ高校の校則で染髪やパーマが禁止されているのか疑問に思っている人は多いのではないだろうか。教育評論家の石川幸夫さんはキャリコネニュースの取材に対し、「髪をいじることは、酒やたばこと同じように『大人のやること』と見られてきた」ことが理由だと語る。
「そのため、働いてもいない学生の身分で髪をいじるのは何事か、という見方が強いのです。髪型問題は今の60代が学生の頃から、長きにわたり教育現場でのテーマとされてきました」
服装や髪型への規制は1970年代半ばから緩和されていった。詰襟がブレザーに取って代わられ始め、それと同時に学生の服装や髪型に対する自由度も高まっていった。
しかし石川さんは、ここ最近は揺り戻しがあると感じているそうだ。「近年、国の右傾化が進むにつれて、子どもたちに対する見方も厳しくなってきました。地毛証明書は、『学生は学生らしく』という保守的な姿勢への回帰の前触れとも捉えられます」と話す。
本質は「意図的に染髪やパーマを施している生徒に対する牽制」
こうした流れを踏まえ、今回の地毛証明書については
「表向きは、生まれつき髪の色が薄かったり、天然パーマがかかっている生徒に対し、不必要な指導をして不快な思いをさせないためと言っていますが、本当の目的は『意図的に染髪やパーマを施している生徒に対する牽制』でしょう。昨年冬、都立高校の校長先生もそう仰っていました」
と話し、「染髪は一般化していますが、教育はとかく保守的。今回の地毛証明書が発端となり、子ども達の締め付けが強まることがないといいのですが」と懸念も示した。
ネットでは、証明書のおかげで髪色の誤解を解くことができ、不良に絡まれずに済んだという経験者もいた。しかし、黒髪ストレートでない生徒にだけ証明書の提出を促すのは、証明書を配布された生徒にもそうでない生徒にも「黒髪ストレート以外は異質」という無言のメッセージを与えていることになる。差別を助長しかねない仕組みを教育現場で使うことに、妥当性はあるのだろうか。