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熊本・大分地震から1年 別府市が全国に無料で温泉を届ける「恩返し」スタート

2017年04月30日 19:13  Techinsight Japan

Techinsight Japan

別府市が全国に無料で温泉を届ける「恩返し」
別府温泉で知られる大分県別府市は、街のあちこちから湯けむりが上がり、温泉客でにぎわう国際観光温泉文化都市だ。しかし平成28年熊本・大分地震の発生により、観光客の足が遠のき、大打撃を受けてしまった。あの震災から1年が経ち、今や見事に観光復興を果たした別府市がこれに感謝し、全国の一般家庭や施設のお風呂へ別府の“恩”泉を無料で届けてくれるという。また、市長や市民約110名が出演し、感謝の気持ちを伝える温かい動画も公開中だ。

【動画を見る】

別府温泉では昨年の地震直後から8日間で推定11万人の宿泊キャンセルが発生、被害総額は13.7億円にものぼった。ゴールデンウィークにも観光客は戻らず、宿泊者数は前年比33%減となったが、5月以降に別府市は観光復興PRムービーや新聞広告を展開、未曽有の危機を全国に訴えた。その結果、2016年お盆シーズンの宿泊者数は前年比4%減まで回復、年末年始にはなんと前年比1%増と見事に観光復興を果たしたのである。


別府市旅館ホテル組合連合会・西田陽一さんは「地震のあと、街全体が静まり返って、この状況が続くとどうなるかと不安で仕方ない日々でした。3か月後にお客様が戻ってきた時は、奇跡だと思いました」と当時の状況を振り返る。別府市長・長野恭紘氏によると「別府市は市民約12万人で、働いている方のほとんどが観光業に従事しています」というから市全体がいかに窮地に立たされていたかが想像できる。


このたび別府市は奇跡的な観光復興を遂げたことに感謝して、全国に温泉を無料で届ける「恩返し」を行う。長野市長は「この1年間、全国のみなさんから物心両面のご支援をいただいて観光復興できたことは本当に奇跡で、いくら感謝してもしきれません。その感謝を、私たちの一番の宝である『アツアツの温泉』を運ぶという“行動”で示したいという気持ちから、本事業をスタートさせました」とこの趣旨を説明している。


特設サイト(http://ongaeshi.gokuraku-jigoku-beppu.com/)のフォームから応募後、選定された自宅や施設まで温泉トラック1台がやってきて、別府市内の温泉を専用ホースにて浴槽に直接給湯するもので、5月中に第一便を届ける予定だ。西田さんは「東日本大震災が起きた時、私は被災地の南三陸町に10回ほど別府のお湯を届けたのですが、仮設住宅の方々が『生きててよかった』と笑うのを見て、温泉の力を感じました。今回は、別府の感謝をお湯に乗せて運ぶ事業。多くの人が笑顔になるといいなと思います」と思いを込めている。


公開中の『「別府温泉の恩返し」PRムービー』では、長野市長や市民約110名が感謝の気持ちを込めて出演し、それぞれが出来るユニークな「恩返し」を表明している。女子高生、ネコ、女将、仲居、砂かけレディー、スナックレディーなど全部で12通りの恩返しが、のどかで温かな雰囲気の中、紹介されている。この動画は、地震からちょうど1年の4月14~16日に撮影されたそうだ。

長野市長を中心に小さな子供から大人まで、まさに老若男女の市民がひとつの温泉に浸かっているシーンもあるが、みんな良い笑顔だ。「WEBでジャンジャン応募してください!」とみんなで声を揃えて元気に呼びかける様からは、別府市が元気を取り戻したのが感じられる。



(TechinsightJapan編集部 関原りあん)